休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』

(音楽に国境は?)と言ってみるお話

20221029(了)

映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』

  ドロール・ザハヴィ監督/ペーター・シモニスチェク/ダニエル・ドンスコイ
  2019年製作/112分/独/原題:Crescendo - #makemusicnotwar
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  <★★★△>

世界をまたにかけたNGOだかの女性が、もちろん「平和」を目指してイスラ
エルとパレスチナについて音楽を使ったプロジェクト提案をする。
提案を受けるのはドイツの指揮者。彼は意義は一応わかっても、どれだけ意
味があるか悩んで、後、受ける。
両方から若い演奏家をオーディションで選ぼうとする。オーディションに行
きたいが行かせてもらえそうもないというのは、主にパレスチナ側の若者二
人で紹介される。本当に行きづらいのね。ついでに、採用されてもテルアビ
ブの施設に行くために毎日通らなきゃならない検問所なんて、イスラエル
のもので、始めにチラッとだけ見せるが、実にいやらしく描かれる。

 

オーディションのシーンは、その後の大混乱の前の楽しみみたいな感じで、

ここがもっとも面白かったですね。
当初は100人のオーケストラを目指すも、応募者は少ないし、パレスチナ
側のレベルが低いしで、最終的にはなんとか室内オーケストラ規模にし、両
者半々で揃える。

あとは、どう言えばいいんだろう。当然、オケ内でのどうしようもないぶつ

かり合いの連続。

書いたように混乱だらけ。指揮者/リーダーは常識的かもしれないが色んな試
みをする。主な練習はチロルに移っての合宿。指揮者の試みが少しは実を結
びそうに見える段階に達するも、「敵同士」の男女がいい仲になって・・・
 
このイスラエルパレスチナの関係が、こんなことでどうにかなるわけもな
いと初めから思ってしまうけれど、とにかくやっちゃうという映画。
野球でいう直球(近ごろだとフォーシームという)なんだが、言ってみりゃ
あ、「へなちょこ球」。勿論そんなこと、百も承知の上での試みであり映画
なのであって、ともあれどうなるか見せる。ぶつかり合いや話し合いの中に、
何らかのヒントぐらいは見つけたいじゃないか、でなくても何か感じてもら
おうじゃないか、ということ。
ああ、わざとののしり合わせるなんて試みもあって、皆疲れ果ててしまう。
効果は不明という扱いだったなぁ。観ているこっちもしんどかった。
 
主な曲は、ヴィヴァルディの『四季』から「冬」、ドヴォルザークのSym.9
『新世界から』の「第2楽章」。そして最後はラヴェルの『ボレロ』という
奇妙な選曲。空港の待合で(えらい省略形でビックリ!)奏される。透明な
パーテイションでもってそれぞれの陣営に分かれ、見つめ合いながら。
このシーンに、何を見るか。でもまあ、この映画の意義が集約、収斂されて
いるんでしょう。前向きと言えなくもない。(カミサンは別の日に観て感動
したらしい) でも、ワタシとしては、最後の『ボレロ』のシーンの前に、
指揮者と企画者である女との分かれの挨拶の会話があって、その場に残され
る指揮者の様子が観る人のおおよその気持ちの代弁。「ここはもういいわ、
次に行く!」というような調子で挨拶して去って行く女の、妙に割り切った
言い方がワタシの記憶に強く残ってしまいました。特に女の言葉の中身には
(具体的に書くわけにはいかないのですが)猛烈な嫌味がこもっていたと思

います。女の主張じゃなく、この試みに関して懐疑的だという映画製作者側

の本当の主張や思いがこもったものに違いないと感じられました。

ここで「音楽に国境はない」という大雑把な言葉について、ちょっと考えて
みたのですが、サマにならず、割愛。
別の方向へ脱線します。
 
この映画・・・
ネットによれば、『世界的指揮者(兼ピアニスト)のダニエル・バレンボイ
ムが、米文学者のエドワード・サイードととともに1999年に設立し、イスラ
エルと、対立するアラブ諸国から集まった若者たちで結成された「ウェスト
イースタン・ディバン管弦楽団」をモデルに描いた』とあります。
ワタシ、不勉強でこのオケのこと知りませんでした。
バレンボイムは、アルゼンチン出身のピアニスト兼指揮者で、もはや大御所
も大御所、しかもユダヤ系。
最近、NHKBSプレミアムで、同じアルゼンチン出身アルゲリッチとピア
ノ連弾をやっている映像をしばらく観ていました。モーツァルト
いつの映像かはわかりませんでしたが、最近のもののようでした。
現在バレンボイムは80歳。足腰が弱っていて健康不安説もあるらしいが、
まだベルリン国立歌劇場のボスのポストは続けているよう。ここではアルゲ
リッチに負けないぐらい(?)指はしっかり動いているように見えました。
ハイおしまい。オチは、、、ありません。