休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

クライスラー小品集/ケネディ

20210513(了)

フリッツ・クライスラー小品集

 FRITZ KREISLER(1875-1962) SOME SHORTER WORKS
①スペイン舞曲 第1番(ファリャ)
②愛の悲しみ
③中国の太鼓
④蓮の花の国(スコット)
⑤太陽の讃歌(リムスキー=コルサコフ
⑥真夜中の鐘(ホイベルガー)
⑦スペイン舞曲(グラナドス
⑧ロンドンデリーの歌

弦楽四重奏曲 イ短調

  ⑨第1楽章 ファンタジア(モデラートーアレグロ・モデラート)

  ⑩第2楽章 スケルツォ(アレグロ・ヴィヴォ・コン・スピーリト)
  ⑪第3楽章 序章とロマンツェ(アレグレットーアンダンテ・コン・モト)
  ⑫第4楽章 フィナーレ(アレグロ・モルト・モデラート)
⑬プニヤーニの様式による前奏曲アレグロ
⑭ ?
 
  ケネディ(ヴァイオリン)
  ジョン・レーナン(ピアノ)①-⑧、⑬
  キャサリン・ゴウワーズ(ヴァイオリン)⑥
  ローズマリー・ファーニス(ヴァイオリン)⑨-⑫
      ビル・ホークス(ヴィオラ)⑨-⑫
  キャロライン・デイル(チェロ)⑨-⑫
   録音:年月日不明 
   CD/1998年/器楽曲&室内楽/東芝EMI/邦盤/中古
   <★★★△>

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ダラダラ行きます。
 
一聴して、気づいたことがあります。いたって幼稚な気づき。
失礼ながら、ケネディさんて、うんと真面目なんだね。
もともとナイジェル・ケネディという名で知っている変わったヴァイオリニス
トという認識でした。ナイジェルを外して「ケネディ」だけにした時もナンダ
カンダと言われたらしい。音楽界から雲隠れした後、戻って、今はナイジェル
を付けた名で活動しているとのこと。
そんなことよりワタシのような情報音痴からすると、博士号を持ちながら、ア
カデミズムに反発するアーティストというイメージが定着してしまっていまし
た。まずまず普通の演奏だけでなく、ちょっと変わったアルバムを覚えていま
すしね。変わり者といってもピアノのグルダやグールドなんかと比較すえうと、
いささか軽薄な感じが強かった。実はそんなことはなかったようです。
今でもジャズやロックをやったりオケを統率したりもして、依然クロスオーバ
ー的活動は続けているようです。

 

昔、名ヴァイオリニストであるヘンリク・シェリングが、美音じゃない、とレ
コード評論に書かれていたのを覚えてます。こっちはまだガキでね、それによ
ってなんだかヴァイオリニストとして少々劣っている、みたいなイメージを持
ってしまったようでした。劣っているだなんて、どうして思ったんだか。ワタ
シの思い込み、誤解、なんですけどね、それと同じような思い込みを、ケネデ
ィさんについてもやってしまっていたみたい。そういう事例ってまだまだ自分
の中にたくさん持ってるんだよ、きっと。
ただし、、、ケネディさんのは、「美音」とは言えない。ハハハ。

 

で、何が言いたいかというと、音楽になよっとした感じが全くないこと。
そんなの当たり前だろ!と言われても困る。
ここで「男らしい」という言葉を使うと、目くじら立てられるかもしれないけ
れど、それが近いと思う。だめなら、例えば・・・サロン音楽に近いんじゃな
いかと思っていたにも拘らず、骨太な解釈に基づく演奏が多く聴かれる、なー
んていう言い方になるのかな。
クライスラーの曲は多分だけど、サロン音楽なんかじゃないんだ、実は。こう

いう(男っぽい)表現のほうが、普通なのかもしれません。

そもそもちゃんと聴いてきた音楽ではないのです。

 
まあ、女々しくったって、この中の曲じゃあ、かまわないのは超有名曲の②だ
けだったですがね。この曲だけは(女々しくはないが)目いっぱいの「解釈」
を加えているようでした。
小品集、みんなよかったです。技巧的なものも抒情的なものも。
抒情的なものに入る、初めて聴く④⑥、ダニー・ボーイ(アイルランド民謡)の⑧
などが気に入りました。
 
音のことを書いておくと、かなり狭いスタジオでの録音なのか、残響が短く、
ややぱさぱさ。そう魅力的な音色だとは思えなかったのだけれど、ライナー
をよく見ると、小品集①-⑧&⑬は、なんとライブ録音なんだって。
  Recorded real live ― no cheating
no cheating というのがヘン。ともあれライブっぽい雰囲気、まるでない。
それから、トラック⑭は表示されてないけど、ケネディの意向で 「Silence
captured after music」と題された音楽のあとの「静寂」が収録されてい
るんだそうな。書いてないもんね⑭なんて。しかも、なんと6分以上。⑬が
終ればそりゃ消しますって・・・  (やっぱり、変わりもんや)
 
と、ここまではついで。(膨らませ過ぎました)
手に入れやすいということで買ったこのCD、本命の曲は「弦楽四重奏曲」。
ラジオで聴いた時は半分眠ってましたけどね、いいなあと感じた記憶にすが
って。
(第一次)大戦中に書かれたからでしょう、とても抒情的ではあるんだけれ
ど、そこかしこが仄暗い。素敵なフレーズは多いものの、「おっ!カッコイ
イ!」というような、まあ、外連めいたところは全くない。一番印象に残り
そうなのは最終楽章でしょうか。曲全体がクライスラーにとってのウィーン
の表現なんだと紹介されていましたが、ワタシにはこの楽章がそんな感じで
した。ヴァイオリンの名手クライスラーといっても、ベースにした感覚はや
はり19世紀末の古き良きウィーンなのじゃないですかね。作曲されたのは
20世紀初頭なのに、曲は古風で地味なロマンティシズムに満ちている。だ
からこそ、忘れ去られるのは早かったんでしょう。
ケネディさんによればもっと評価されるべき作品なんでしょうが、ワタシに
は、それはちょっと難しいかなと・・・。でも、変テコリンなところ、でき
そこなったような、バランスの悪いところは皆無。よくまとまっていて、暗
めの抒情が心地よいものでした。

  (ライナーのおしまいのほうに書いてありました。この四重奏曲は、ケネ

  ディさんと関係があったようです。クライスラーがこの自作をロンドン

  で初録音した時〈1935年〉のチェリストが、ナイジェルの祖父だったん

  ですって。それもなかなかの名チェリストだったそうな。クライスラー

  のクァルテットのメンバーとして写っている写真もありました。ともあ

  れこのCDへの録音の理由の一つではあったと考えてよいよう。)

 

ジャケット写真(ライナーの表表紙の写真)、暗すぎだろぅ!
これはいくらなんでもヘンだよ。わざとなんだろうが。