休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

「オリエント急行殺人事件」「遥か群衆を離れて」「レディ・カロライン」

20210301(了)

THE FILM MUSIC of Sir RICHARD RODNEY BENNET(1936-2012)

R・R・ベネット : 映画音楽集

オリエント急行殺人事件 11:18
    1974年/英・米/S・ルメット//アルバート・フィニー//アガサ・クリスティ
「遥か群衆を離れて」 15:28
    1967年/英・米/J・シュレジンジャー//J・クリスティ//トマス・ハーディ
③④「レディ・カロライン」 17:43
   Elegy for Viola and Orchestra
   Ⅰ. Molto vivo- Lento- Alla marcia- Lento 8:03
   Ⅱ. Marstoso-Andante con moto-Poco agitato-Alla breve 9:39
    1973年/英/ロバート・ボルト//サラ・マイルズ/ジョン・フィンチ
夜はやさし/ニコルのテーマ 2:04(premiere recording)
    1985年/米?/?監督//メアリー・スティーンバージェン
「魅せられて四月」 19:20
    1992年/英/マイク・ニューウェル//ミランダ・リチャードソン//エリザベス・フォン・アーニム

フォー・ウェディング(4つの結婚式と1つの葬式)

   /愛の場面 3:27

    1994年/英/マイク・ニューウェル//ヒュー・グラント/アンディ・マクダウェル
 
  ラモン・ガンバ指揮/BBCフィルハーモニー管弦楽団
  録音;2000年1月&7月、英、マンチェスター Tot.69:45
  CD/Ⓟ&ⓒ 2000 Chandos/映画音楽/輸入盤/中古
  <★★★★△>

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①②と⑦は映画を観た人も多いでしょう。というかワタシはその3つしか知り
ません。①以外は勿論例によって、映画は忘却の果て。音楽のほうも、いさ
さかなりとも覚えていそうなのはやはり①のみという感じ・・・
 
さて①「オリエント急行殺人事件」。
恥ずかしながら、もううっすらとしか覚えていないはずだと思ったら、そもそ
も覚えているつもりの音楽とまるで違ってました。
出だしからこんなにわくわくさせる音楽(これ、最高!)が鳴っていたなんて、
全く思わなかったのです、かなりクラシカルだね、嬉しいことに。
だいたいがねぇ、ダンス音楽でできていて、始めがワルツ、そのあとが2拍
子の普通のダンス音楽、そのあとがタンゴ。繋ぎにもワルツ(だけじゃない
けれど)を使ったりしている。でもともあれ、特に出だしのワルツがすごくゾ
クゾクさせてくれました。R・シュトラウスの「ばらの騎士」だとかラヴェル
の「ラ・ヴァルス」だとか・・・いろいろ連想しちゃう。列車まで思い浮かべ
てしまうのは、やっぱり映画の影響かなぁ。
11分ちょいが騒ぎ立てることなくなかなか充実していて、こんなにしっとり
品よく美しかったのね。驚いた! もっと早く聴いてりゃよかった。
 
②「遥か群衆を離れて」。J・クリスティやT・スタンプよりアラン・ベイツ
覚えているといった記憶しかないつもりだったのですが、なんと、こっちの音
楽は覚えてました。しかもすばらしい。Chandosの録音もいいのだろうが、な
んとも繊細かつ華麗なオーケストレーションにほとんど感激。ここまで素敵な
ら、覚えていても不思議じゃない・・・なんてね、そんなことはないでしょう、
どうせ後になって何度か聴いてたんやろな。
15分半でも足りない感じ・・・もっと長く聴きたいですね。陳腐だけど、文学
の味わいとでも言いますかね。
イギリスのクラシック系の作曲家には好きな方が多いんですが、またまた一人
増えました。
ところで、映画音楽のサイトの主さん、この映画のサントラを扱っていなかっ
た。なんでなのかなぁ。ほとんど信じられない。正直言って「オリエント急行
より傑作じゃないかしらん。考えられる理由としては、CD化されていないから
か。あるいは使いまわしか、真似か・・・
鼻歌に出来る、実に美しいメロディライン等で活躍するソロ楽器は、オーボエ
とたぶんイングリッシュホルン
考えすぎかもしれないが、こんなに素敵な音楽に支えられる映画だったんだよ
な・・・
 
③④「レディ・カロライン」; 「ヴィオラ管弦楽のためのエレジー」という
サブタイトルがある通りで、ヴィオラの協奏的作品としてプログラムに乗っけ
ても受けそう。
②があまりに素敵なので、この「レディ・カロライン」はちょっと割を食った
感じ。文学的な波乱万丈を思わせる、とてもロマンティシズムあふれる音楽。

それは特に③で、①や②のようなキラキラ感のあるオーケストレーションもあ

る。

④はLove Theme的な始まり。メロディがなかなかいい。③にはないテーマが
その後も色々流れるので、やはり波乱万丈なんでしょうね。近ごろのまとまっ
たメロディやテーマらしいものを作らない映画音楽の傾向からすると、古臭い
し、手間もタイヘンなんじゃないかという気がします。
 
⑤「夜はやさし」は、タイトルからして知りません。
リズムセクションがついた、とてもオシャレな楽曲。40年代、50年代とい
ったところの表現でしょうか。間違いなく素敵なんだけれど、1テーマ、2分
だけじゃあ、なんとも言えない・・・
 
⑥「魅せられて四月」も知りませんが、このCDでは最も長い時間を割いてい
るので、力作なんだろう。感覚としては「レディ・カロライン」と似た傾向の
音楽のよう。でもはっきり違っている点は、オンド・マルトノを使っているこ
と。シンセかコンピュータを使っているのかと思いきや、奏者名が載せてある

ので、実際に使っているんだ。でもどうもオンド・マルトノだけじゃないと思

う。

ほかにもオーボエ、ヴァイオリン、チェロなどがソロを取る。なんといっても
オンド・マルトノの特色は際立っている。でもね、少し慣れてくるちと、オー
ボエのソロのほうが正直なところ優れている気がする。(映画の中身はあえて
見ないでおきます) いやぁ、でも②③④の波乱万丈の感じがないだけで、音
色もメロディも、他に負けないぐらい美しいです。
 
⑦「フォー・ウェディング」;これも⑤と同じで、一つのテーマだけ。「愛の
場面」なんて書いてあるとおり、とてもロマンティックで美しいけれど、それ
だけじゃあ、言えることはほとんどない。甘ったるくて美しい・・・それだけ。
 
 
でもね、短い⑤と⑦以外はしっかり組曲ふうに繋いだものだったようで、ベネ
ットの魅力は余すところなく表現されていたんじゃないでしょうか。現代音楽
というものじゃなく、古風でロマンチックなクラシック系の音楽の系譜といっ
ていいでしょうが、キラキラ感たっぷりの魅惑のオーケストラル・サウンド

極み。その手が好きな方には大推薦のアルバムです。勿論ワタシも気に入りま

した。

特に①②③④は比類なき傑作だと思います。
 
ちょっと長くなってしまいました。
ベネットに興味が向いたのが遅かったようです。
今回は、録音や演奏はよくても、いわばサンプラー
始めの三つなんざ、もっとたっぷり聴きたいもんです。こんないい音で聴いて
しまっちゃ、サントラはきっと聴き劣りするでしょうけどね。もっとも、幸か
不幸かよさそうな作品は高いか手に入りにくいようです。クラシック系の作品
が2枚、同じChandosから出ているので、いつか手に入れてみたいですね。

 

※付録

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       (犬の散歩中・・・すごい赤、紅、なのでパチリ。)