(4)バレエ音楽「春の祭典」全曲(1911-13) |
アンセルメの「春の祭典」は我ながら意外で、初めてです。 |
この曲はクラシック音楽ファンにとって、まあ、いわば現代音楽の入り口とでも |
いうべきものでね、みんながみんなといってもいい、聴くのはある種の通過儀礼 |
みたいなもの。ここから戻ってもよし、先に進んでもよし、なんて感じかな。 |
ワタシはこの曲、随分な回数聴いたことになります、きっと。好き嫌いから言え |
ば、勿論好きでしたが、多分「火の鳥(全曲)」や「ペトルーシュカ」ほど好き |
ではないかもしれない。 |
とにかくいろんな演奏を聴きました。なにせ抜群の人気曲だから、レコーディン |
グもとんでもない数がなされてきた。ラジオでもさんざんかかる。もっとも、ワ |
タシが聴いた数なんてほんのわずかなものですが、それでも聴いたものは、よほ |
ど料理のし甲斐があるのでしょう、さまざまな工夫に満ちた演奏が多かった。も |
うこの何年も聴いちゃいませんでしたけどね。ハハハ。 |
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で、その経験をもとにアンセルメ盤を聴いたわけです。(前段、長すぎ・・・く |
どいですよね。でも、ワタシも納得したいのです、それだけ気になり続けた音楽 |
なのです。そういうかたきっと多いと思いますよ・・・) |
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録音は「ペトルーシュカ」の数か月あと。十分に優れていました。特徴的なのは |
テンポ。ほとんどインテンポで通している。「ペトルーシュカ」や「火の鳥」と |
同様で、基本的にはバレエ音楽という条件下の演奏になっているように思います |
ね。精度もそこそこいい。決して緊張感がないわけじゃないのですが、表現個々 |
ということになると、その後のさまざまな録音からすると緩くてのんびりしてい |
るかのようですし、ワタシ自身も若干はそう思わぬでもない。 |
で、今のところの結論はというと、それでもこの演奏の価値は薄れていない気が |
する。初演のピエール・モントゥーのものもそう。作曲者ストラヴィンスキーの |
意図がものすごく濃く反映していると思うからです。アンセルメもモントゥーも |
作曲者と話し合ったようですしね。それに、不思議なことに、いやこれが大事な |
んですが、意外や思いのほか「野趣」のようなものを、原初的とでもいような先 |
祖の人間を、濃く感じるのですよ、この演奏。今となっては最高にオケが上手い |
なんてこともない、むしろあちこちミスっぽいところもあるにも拘らず、瑕だと |
思わない。なんででしょう。一つには、バレエによるドラマの追い方になってい |
るから、なんてことなんじゃないかと思います。少し苦しいか。どんなもんでし
ょう。
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