休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ケクラン:アンサンブルのための作品集

もっと当たり前に聴かれる作曲家になってほしい

これぞ傑作集

 

ケクラン:

   アンサンブルのための作品集

Charles Koechlin/Œuvres pour ensembles
20201027(了)
 
(1)陸景と海景 Op. 63b (Paysages et marines)(1916)
   ①-⑫ 24:07
(2)オーボエ・ダモーレ・ソナチネ Op. 194, No. 1(1942-43)
   ⑬-⑰ 10:31
(3)オーボエ・ダモーレ・ソナチネ Op. 194, No. 2(1942-43)
   ⑱-㉑ 9:55
(4)木管七重奏曲 Op. 165(1937)
   ㉒-㉗ 14:01
(5)7声のソナタ Op. 221(1949)
   ㉘-㉛ 12:48
 
  アンサンブル・イニシウム & アンサンブル・コントラスト
  録音:2011年、11月&12月、仏 Tot.71:43
  CD/室内楽/Ⓟ&ⓒ2012 Timpani/輸入/中古
  <★★★★☆>

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シャルル・ケクラン(1867-1950)のアンサンブル集です。

名声にこだわることなく、どんどん書きたいものを書いた不世出の作曲家。
ちゃんと評価されなきゃならない・・・
 
短い12曲が集まった(1)がこのアルバムのムードを代表しているみたい。
最初①はフルートとピアノのみ。徐々にクラリネット、ヴァイオリン、ヴィオ
ラ(altoと表記してあるのはそうですよね)、チェロが代わりばんこのよ
うに加わってくる。ぶ厚く鳴ることはない。
牧歌的なもの、夜想曲のようなものというと当たり障りがないんだが、それら
を通り越して、神の園に入り込んでいるとでもいうような、なんとも、、、
静謐、密やか、穏やか、精緻、などが一体となっている、総じて息の長い音の
世界。確かに地上だけでなく、海の上にいるかのような感覚を覚える時もある
ね。これは、ドビュッシーみたい、という言い方をされがちなのかな。
でも絶対違う。すばらしいオリジナリティだと思います。
 
オーボエダモーレというのが珍しい。オーボエイングリッシュホルン(コー
ル・アングレ)の中間的な大きさで、オーボエの軽やかできらびやかな高音は
出ずにややくぐもっているが、低音はオーボエの若干ひしゃげた感じに対し、
丸みを帯びて柔らかい。
とか言いつつ、実際はこのほかに、フルート、クラリネット、ヴァイオリン(2
本)、ヴィオラ(2本)、チェロ(2本)、クラヴサンが入っている不思議な編
成。(1)と違って厚みがあり、現代に近づいたアンサンブルになるし、シャラ
ンシャランとクラヴサンが典雅なムードもプラスする。結果、(1)よりやや大
らか、現世的になった、かな。オーボエダモーレのメロディラインが実にヨロ
シイ。(2)と(3)の違いは、例えば、(2)はやや牧歌的。(3)はよく歌っ
て盛り上がったり、テンポが上がって朗らかになったりする。ちょっとラヴェ
ルっぽい。
 
(4)木管七重奏。フルート、オーボエコールアングレクラリネット、サク
ソフォン(アルト)、バッソン。最後に書いてあるのがcor。何かと思ったら、
ホルン(金管なのに木管・・・)なのね。
こういう編成の木管のアンサンブル、好きですね。なんでかわからないのです。
若いころはまるで魅力を感じませんでした。50歳に近づいたころからちょく
ちょく聴くようになりました。
(1)の雰囲気からはちょっと外れてしまってます。まあ、雑に言えば「喜遊
曲」ってことですか。楽しい。
 
(5)は最晩年の作品。クラヴサン、フルート、オーボエ、ヴァイオリン(2
本)、ヴィオラ、チェロ。
㉘はヴァイオリンが思いっきり歌って抒情的Andante、㉙は木管が楽しげに
踊るAllegro、㉚は明るいオーボエがメインでしっとりと歌うAndante、最
後㉛はAllegro表記だけれど、急・緩・急・緩・急とコロコロ目まぐるしく変
わって終る。途中の一カ所でクラブサンが珍しくソロを取りました。
テクニカルな感じが勝ち、若い発想が引っ込んでしまった。
 
二つのアンサンブルが一緒になって初めて作れたという、編成的にはなかな
か厄介な曲で構成された、凝ったアルバムのようです。
演奏もよかったが、ケクランの才能こそ、大いにアピールできているいい

アルバムなんじゃないか、と思います。