休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『サンセット』

20200723(了)

映画『サンセット』

 
 ネメシュ・ラースロー監督//ユリ・ヤカブ/ブラド・イバノフ/エベリン・ドボシュ
 2018年製作/142分/ハンガリー・フランス合作/原題:Napszallta
 <★★△>

f:id:kikuy1113:20200805004747j:plain

〈映画.com解説から〉 ラースローの長編第2作。第1次世界大戦前、ヨーロ
ッパの中心都市だったブダペストの繁栄と闇を描いた。1913年、ブダペスト
イリス・レイテルは、彼女が2歳の時に亡くなった両親が遺した高級帽子店
で職人として働くことを夢見て、ハンガリーの首都ブタペストにやってくる。
しかし、現在のオーナーであるオスカール・ブリッルはイリスを歓迎すること
なく追い払ってしまう。そして、この時になって初めて自分に兄がいることを
知ったイリスは、ある男が兄カルマンを探していることを知り、イリスもブタ
ペストの町で兄を探し始める。そんな中、ブタペストでは貴族たちへの暴動
が発生。その暴動はイリスの兄とその仲間たちによるものだった・・・
 
上の解説ではイリスはいたって普通なんだが、実際はどうも彼女、最初っか
ら最後まで、思いつめた様子や目つきで通す。
とにかく、なんでそんなに思い詰めてるんだろうと不可解なままずるずる。
そして秘密めかしたふうな彼女の態度のみならず、周りのそっけなさ、へん
なヤツのみすり寄ってくるのはなんで?
 
とりあえず最大の衝撃は、自分には兄がいるらしいということ。最大の疑問
も兄で、近くにいるらしいが近づけない、生死も不明、どういうことをやっ
ている(やっていた)かもてんでわからない・・・
疑問が一進一退、実に緩慢にながら融けて行くようなんだけれど、前に書い
たように、なんたって端から思いつめているもんだから、彼女にとってのイ
ンパクトの大小が掴めない。
 
おしまいのほうになってようやくわかるのは、世界的な大事件といってもい
いことに兄が絡んでいたり、主舞台帽子屋にもかかわりがあったこと。どう
もこじつけっぽい(そういう演出もありだけどネ)気はしましたけど。
でもそこまでが実にまだるっこしかった。いやその大事件に繋がろうが、繋
がるまいが、実はどうでもいいというか、彼女の疑問や鬱屈の対象が徐々に
ずれながら進んでゆく、そのかったるさが、なかなかしんどかったというこ
とです。
 
彼女は、大事な産業であったらしい「帽子」業界の大店ゆかりの人間で、創
業者である両親が大変なことをしでかしたかで(火事らしい)、遠方にやら
れていたことが、始めはずっとミステリーとして存続するんだけれど、現在
のオーナーの態度振る舞いが、なんとも煮え切らないのみならず、はじめは
撥ねつけていた彼女を、ずるずるとバックアップしだす。その理由がこれま
たわからないんだよね。
大事件を控える20世紀初頭のヨーロッパのなにやらきな臭い町々や雰囲
気などは、それなりに良かったんですが、観ているほうは彼女がおんなじ
調子で思いつめ続けるのに倦み、ロマン派の弦楽四重奏(「死と乙女」の
第二楽章でしょう)がずっと流れ続けるのにも飽きてしまいました。
幕切れには少し驚き、もやもやのいくらかはスッキリしましたが、まるで回
収は足りなかった。2時間20分も長すぎました。(横でカミサンいびき)
「謎を謎のまま叩きつける、芸術家魂が炸裂した怪作」、ウーン、そんなも
んですか。