柳家小三治/『ま・く・ら』
20200706(了) |
1.ニューヨークひとりある記 |
2.めりけん留学奮戦記 |
3.玉子かけ御飯 |
4.駐車場物語 |
5.寄席、いま昔 |
6.彦六師匠と怪談噺 ―「はて恐ろしき執念じゃなァ」 |
7.女の色気 |
8.フランク永井のゴルフ |
9.バイクは最高! |
10.陛下の思い出 |
11.バリ句会 |
12.CD講座 |
13.歩くが勝ち |
14.郡山先生 ―幸せって何だろう |
15.日本の塩はまずい! |
16.ミツバチの話 |
17.小三治的こころ ― 「マイ・プレジャー」のススメ |
18.口上 |
あとがき |
解説 矢野誠一 |
1998年/落語のまくら≒一種のエッセイ?/講談社文庫/中古 |
<★★★☆>
始めは、まくらが読み物になっているのかと思った。知らぬ間にすーっとお噺 |
のほうへ客を誘導する、しやすい状態を作り出す。そのあたりの微妙なハザカ |
イのところぐらいまでが載っている、てなイメージでした。 |
始めの「ニューヨークひとりある記」なんて、のっけからエライ長い。「まく |
ら」といっても、これじゃいくらなんでも、本題に入れないだろうと思ったら、 |
どうも、落語だけじゃなく、トークショーみたいなものも活字に起こされてい |
るんだ。そういう録音がもとになってて、それを加筆訂正。どうりで・・・ |
アメリカに4人で行ったのとは別の機会に、一人で行ってらっしゃる。お好き |
なバイクに乗ったわけではないだろうから、ひょっとすると多い趣味の一つ、 |
クラシック音楽のためだったかもしれない。あるいは「MET」か。ま、ここ |
には書いてないんですが。 |
これだと、完全に漫談だね。 |
駐車場物語。こいつぁ面白かった。長谷川さんて妙に礼儀正しいホームレスが、 |
師匠の借りている駐車場の2区画の一つ、バイクを4台置いているほうに住み |
ついちゃってて、って話。 |
しみじみなのかドライなのか・・・映画にでもなりそうだった。 |
さてさて、ここまでは漫談でした。「枕」じゃない。以下が「枕」。こんなに |
長い「枕」、やってんだねぇ。 |
多趣味も極まれり・・・っちゅうか、ここまでくると恐れ入る。 |
いわば趣味の話のオンパレードといってもいい。 |
みんな紹介なんかできるわけがないが、音楽が主のブログのつもりなんだと書 |
いているワタクシメとしては、外せないのが、12番目の「CD講座」。 |
なんたって、CDの音をよくする方法ってんだもの、そりゃ気になる。三つの |
方法が紹介されている。クラシック音楽のファンであることは昔っから知って |
ましたが、オーディオにもうるさかった。で・・・ |
①冷凍庫で凍らせる。(1日) 凍らせたらすぐに外気には触れさせずに冷蔵 |
庫に移して、パーシャル解凍させる。(2日) 出して普通の温度になったら |
プレーヤにかける。これは知られた方法なんだって。 |
②緑のペイントを、中心の切り口と外の切り口に塗るという方法。これは① |
より前から筆者は知ってやっていたんだそうな。理屈を少し説明した後、音 |
がくっきりするのみならず、ふくらみや柔らかさも出るんだと。フーン・・・ |
③これがビックリ! レーベル側に、カッターでもって中心からだいたい4本 |
ぐらい外に向かって、ま、十字って感じやね、すっと切り傷を入れろっての。 |
悩まずに引けって。雑誌にオーディオの権威が書いていたんだって。で、恐 |
る恐るやっちゃった。表から見てもそりゃあもう露骨にキズが見える。ひど |
いことやってしまったと後悔したが、かけてみるしかない。ところがところ |
が、ってんだね。 |
プツプツ音もせず、なんともいい音になるという。「えもいわれぬ音になる」 |
だとか、「小三治が小さんになる」なて比喩を使っている。(そりゃ笑いま |
すって!) |
こりゃオレもやってみるっきゃないとなったのは、しょうがないですね。 |
やりましたヨ、思い切って。なんともひどい傷! |
でも、ひとまず安心しました。ちゃんと読みとってくれたからね。その安心 |
感は大きかったです。 |
で、どうだったか。 |
ワタシのチャチな装置では「えもいわれぬ音」にも「小三治が小さんに」も |
なったとは思えないが、なんだか響きがどっしりとしてバランスよく豊かに |
なりましたね。それになんというか、押し出しや柔らかさや色っぽさも出て |
きた気がする。当たり前ですが、演奏自体が良くなったり、なんてことはな |
い。もう少し実感を込めて言うとするなら、音が「膨れた」感じ、かなぁ。 |
いや、よくなってる気はするんですよ、確かに。でも「豊か」という言葉と |
は、少しニュアンスが違う。おそらくこの違いは、上級のオーディオ装置で |
ないと、しかとはわからないのではないかと思うんだけどなぁ。 |
でも、ああ、あれとあれが効果あるかも、なんて早速(試し切りするCDを) |
考えたりなんかして・・・ これぐらいにしておきましょう。 |
オーディオに詳しい方にとっちゃあ、えらく古い情報なんでしょうが、どれ一 |
つ、知りませんでした。 |
①は、やっても元に戻ってしまうみたいで、継続しない気がする。 |
②と③はこりゃ継続性OKだし、併用だって可能かもよ。 |
書きすぎてしまいました・・・金をもらっている人は、紙面が尽きた、なんて |
書いてごまかすんだが・・・ |
この章の最後の3ページを貼り付けてみます・・・ |
実は⑰にもオーディオの話がありました。 |
こっちはスピーカーのネタ。 |
中にグラスウールなどの詰め物があっても、そんなのはおっぽり出して、代わ |
りに、なんと「紙風船」を入れるといいんだ、なんてぇの。 |
本来の落語より「まくら」がオモロイなんて言われたりするようになって、ご |
本人はイヤだったろうが、それも芸だとあきらめ顔やね。 |
またそれに目をつけられて本になってしまったことも、当然微妙。 |
もうやめときます。 |
たくさん読んではいませんが、志ん生のものとか米朝のものとか、皆面白か |
ったので、このジャンルも取り込んだら嵌りそうです。 |
タイプはまったく違っても、小三治さん、楽しかったです。 |