休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『アルゴ』サントラ/デスプラ

デスプラ/サントラ『アルゴ』

20200705(了)
  Alexandre DESPLAT/ARGO: OMPS
  ①-⑯
  CD/ⓒ2012 WaterTower Music/Warner Bros.Entertainment/ioda/
    /映画音楽/輸入
   <★★★★>

 

   2012年/米映/ベン・アフレック(監督・主演)//G・クルーニー,アフレック(他製作)//
    B・アフレック/A・アーキン/B・クランストン/J・グッドマン/ケリー・ビシェ/カイル・チャンドラー

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〈素晴らしき映画音楽作曲家たち〉 には取り上げられていない。
不思議。
 
イラン(テヘラン)で実際にあった話にヒントを得て作られたという作品。
1979年のテヘランで起きたアメリカ大使館人質事件と、その裏で敢行さ
れたCIAによる救出作戦(映画の製作をやってるんだといかにも苦しい騙
しをその手段にする)の行方を追い掛ける。
本気を疑うような突拍子もない計画を真面目に装うのが、結果的にはけっ
こう面白かったですね。
 
音楽はデスプラだと知っていましたが、映画を観ているあいだは、妙にエ
スニック風味の強いものだと感じたので、いまいち手を出すのをためらっ
ていました。で、安くなったので・・・って、このパターンばっかりです。
何でもできちゃう才人だと思います。でも、エスニック風味ということで
は『預言者』という変わった作品がありました。映画はなかなか微妙なも
のでしたが、音楽がものすごく面白かった印象。サントラは現在は手に入
れにくいようです。
 
イランの音楽がどんなものかはよく知りません。でもどうだろう、ここじ
ゃ中東全体のイメージだと思いました。
で、ざっと車中で流していると、どのトラックも、いかにも現地の民族音
楽らしく聞こえるんだが、ちゃんと聴き始めると、おそらくはそれらしい
音楽をいろいろ集め、再構成したもののようでした。
そしてそれとドッキングさせるオブリガートを大事なつなぎとして用意し
ている。大半はシンセのよう。低音のズンズンドンドンをうんと抑えた暗め
な、あるいは不気味な調子。それを民族音楽のほうに、食い込ませるよ
うに合わせる。両者が解け合わさるような感じに進んでゆく。
曲は違うがそんなパターンの音楽が3つばかり続くと、一転、ジョン・バリ
ーばりのぶ厚くゆったりした弦を主にした感動的チューンが現れる。
それからはまた元のパターンに戻るようなんだが、今度は現れる民族音
楽の感じが、徐々にぐにゃーっと、アブストラクトなふうに変形、変質して
ゆき、伴奏部分とどろどろと融け合うとでもいうふうに変わってゆく。
最後のチューンはやや長く、虚脱や空しさが感じられるピアノムードのあ
と、一度、3-4曲目に出てきたぶ厚い弦主体の音楽が今度はぐっと抑
えて静かに流れ、虚しさの漂うエンドタイトへ。まあそんな感じの余韻の
ある終わり方。
勝手な感覚です。
 
とにかく優れたサントラであるだけでなく、アルバムとしてとても刺激的な
んじゃないかと思いました。少しカッコ良すぎるかもしれない。
始めに書いた通りでたいへん器用。そして夥しいサントラを書いているか
ら、仕事が早い作曲家。
ともあれ器用さがよくわかる凝った音の世界でした。
(トランプさんにゃ、かかわりのねえ(≒理解を超えた)話でござんしょう。)