休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ケクラン、まだまだ楽しみます

20200421(了)
ケクラン(1867-1950);弦楽四重奏曲

(1)弦楽四重奏曲 第1番 Op.51
   ① Allegro moderato          6:46
   ② Scherzo               4:02
   ③ Andante quasi adagio        4:27
   ④ Finale/Allegro con moto       4:23
(2)弦楽四重奏曲 第2番 Op.57(1925-6頃)
   ⑤ Adagio              11:20
   ⑥ Scherzo               8:33
   ⑦ Quasi adagio            4:30
   ⑧ Finale/Allegro moderato        17:04

   Ardeo Quartet
   録音:2006年10月、パリ Tot.61:32
   CD/室内楽/ⓒ&Ⓟ 2006 AR RE-SE/輸入
   <★★★★>

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同じレーベルのCDで、去年11月にピアノ五重奏曲と一緒に入っている
弦楽四重奏曲の第3番を聴いて、今回の1番、2番に繋がりました。
3番は作品番号は72、作曲年は1919~1921年。構想されたのは前の2曲
と同じ頃なんだが、書かれたのはちょっと離れています。長さは短い1
番よりもっと短くあっけないほど。
やはり4楽章で、楽章ごとの性格がきちっと書き分けられていて、とて
も古典的たたずまい。穏やかで明るく、ロマンティックな美しさに満ち
たものでした。もっとも、聴きごたえとしては、デモーニッシュですら
あるピアノ・クインテットのほうだった。演奏者は同じく女性ながら別

の4人組。

(なぜ別の団体になったんだろう、同じ団体で録れられそうなものじゃ

 ないかと、普通なら考える。何かあったか、録音には2年ほど開きがあ

 る。このクァルテット2曲のほうが録音は前。

 載っているこのレーベルのディスコグラフィーを眺めてみると、どう

 も女性ばかりの演奏家や団体のよう・・・そういうレーベルなんだろ

 うか・・・どうでもいいようなことでした。)


で、戻って、どうなんだろう、1番2番は・・・

(1) いやぁ、感じとしては3番と似てましたね。曲の構成もしかり。
スケルツォにあるピツィカートなんかだってそうだし、アダージョ部の
静謐でどこかストイックな美しさもそう。

(2) 一方第2番は、倍以上の長さ。静かに、ちょっと暗めに始まって、
1番や3番とは性格が違う感じ。ま、陰鬱というほどじゃないですが、始
めが長大でこんなアダージョというのは相当意図があったんでしょう。同
じようにスケルツォも鋭い突っ込みで、1番や3番の楽しさとはだいぶん違
う。そして中間部の和声はぐっと新しい! 短いアダージョのような第3楽
章も仄暗い。最終楽章がなんとも長くって17分もあるが、一応ロマンティ
ックな調子に「戻って」いる感じ。アレグロだけれどモデラートでもある
んで、かなり長く感じる。それに、途中でなんとなく暗い感じも漂うんだ
な、これが。それがなかなか美しい。ちょっと『ペルシャの時』を連想し
ました。最後三分の一ほどでは、ようやくお目覚めかというふうに、この
CDで最も激しい調子に熱く盛り上がる。

で、去年聴いたほうのCDの横文字のライナーをちらっと読んでみたら、な
んと、この2番、初演は作曲されてから60年以上もたった1987年だったん
だって。すいぶん嫌われたもんやねぇ。埋もれてたんかなぁ。長さかなぁ、
やっぱり。わからへんけど。そこまで疎まれるほどでもないと思うんやけ
どな。逆に癖になる人だっていそうな気がする。

 

マスネ、フォーレドビュッシーなどの弟子筋で、ご本人の弟子はプーラ
ンクやタイユフェールら。
後には無調にも興味を持って、ドキッとさせる曲もある。
やっぱりちょっと変わりもんですよね、この人。

が、ここではドキッとさせるとことは皆無で、だいたいは、なんとなく浮
遊するようなゆったりとした乾いた抒情が印象として残る。と言いながら、
スケルツォ部分がワタシ、とても気に入りました。
感情的にはならないプロらしいプロ・・・なんていうと、何か決定的な有
名曲に欠けているロシアのグラズノフをちょっぴり連想します。