休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ツェムリンスキー/交響的歌曲・歌劇「カンダウレス王」からほか

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20200106(了)
ツェムリンスキー Alexander von Zemlinsky(1871-1942);

(1)交響的歌曲 Op.20
   (アフリカ系アメリカ人詩人のアンソロジー『歌うアフリカ』による。1929)
  ①. Lied aus Dixieland 3:28
  ②. Lied der Baumwollpacker 3:04
  ③. Totes braunes Mädel 2:12
  ④. Über Bursche 2:07
  ⑤. Erkenntnis 2:30
  ⑥. Afrikanischer Tanz 1:16
  ⑦. Arabeske 2:24
(2)『時の勝利』から3つのバレエ音楽(1903)
  ⑧. Reigen. Masig bewegt (feierlich) 7:07
  ⑨. Fauntanz. Lansam - sehr schnell 4:46
  ⑩. Presto 3:17
(3)歌劇「カンダウレス王」(抜粋)(1935-36)
   (instrumentation:Antony Beaumont 1992-96)
  ⑪Vorspiel, 3. Akt 5:54
  ⑫ Monolog des Gyges, 3. Akt 6:01

  フランツ・グルントヘーバー(バリトン)(1)(3)
  ハンブルク州フィルハーモニー管弦楽団
  指揮;ゲルト・アルブレヒト
  録音:1992年6月、Musikhalle Hamburg /Tot.44:40
  CD/歌曲・オペラ/Ⓟ 1993 CAPRICCIO/輸入/中古
  <★★★★><★★★△><★★★★△>

 

(1)詩はアフリカに関係しているとしても、音楽にアフリカは感じない。
ただしオーケストレーションはだいぶん進んでいる感じで、調性がかなり
曖昧に聞こえるところが多いように思う。テンポのある曲では皆そうなん
だが、④や最後の⑦に至ってはストラヴィンスキ―(の新古典)風。
この曲のみ、去年の10月にコンロン/ギュルツェニヒ管のCDでも聴いて
いて、その周りの曲に比べても変わり種で新しい感じだと書いている。
違いといっても難しいんだけど、音色や全体の印象で、コンロン盤がスッ
キリした音色で全体的にも締まって明るいのに対し、このアルブレヒト
は、バリトンが非常に輝かしい声で表現に陰影が濃く且つ正確、と歌の鑑
賞能力のないワタシでも思うだけでなく、オケの推進力、厚みのある音、
細かい表現力など、プラスアルファが多く、明るさという点では乏しいも
のの(そんなもの目じゃないですね)、はるかに含みの多い音楽になって
いるという印象。少し重いかな。でも鈍重じゃない、むしろ劇的と言った
ほうがいい。コンロン盤はパイロット、このアルブレヒト盤のほうがずっ
と好みです。こうなるのがクラシックの宿命・・・

 

(2)バレエ音楽で、作曲は(1)から四半世紀i以上も遡る。
ホフマンスタールの台本による舞踊詩『Das gläserne Herz』(1901-4)の
初稿に当たるのがこの「Der Triumph der Zeit」のバレエ音楽3曲。
⑧(野外の輪舞)はワーグナーだと思っていたら、コルンゴルトアメリ
カでの都会的映画の音楽みたいになっちゃう。ちょっと不思議な感覚。
⑨(牧羊神の踊り)例えばチャイコフスキーのバレー音楽やイタリアオペ
ラの中に混じるバレエ音楽のような感じのようではあるんだけれど、なん
となくこの演奏が重たい。これでいいのかな。
⑩(プレスト) これもね、ちょっと重い感じ。プレストじゃない・・・
重たるさは、(1)ほどしっくりこないなぁ。

 

(3)ジイドの原作をツェムりンスキー自身が翻案し作曲を始めたが、渡
米途中で中断。亡命後、第二幕のヌードシーンがご法度だとわかり完全
に放棄してしまった。その半世紀後に英国のボーモントというかたがオー
ケストレーションを完成させて、1996年に初演された。筋書きは省略し
ますが、「フィレンツェの悲劇」を若干連想させなくもない、奇妙な話。
わりと人気作なんですって。でもまあここでは2曲のみ・・・ それでも、
  ・・・きわめて無調に近く、調性感の判然としない楽句が多用され、
  最も進歩的な作風を示すもの・・・
だそうで、それを受け継いでオーケストレーションを完成させたんでしょ
う、なかなかいけてます、じゃないな、実に素晴らしいです。
⑨⑩で重いと書いたことが、ここではバッチリ!歌唱の入る⑫を聴いて
いると、全曲鑑賞の欲すら芽生えました。こういうの聴くとね、ツェム
リンスキーからアルマを奪ったマーラーをなにかと引き合いに出すのが、
いかにバカげているかわかります。(ワタシがそうしてしまうのです)

 

バリトンのグルントヘーバーさん、全然知りませんでした。歌苦手人間
ですからね。かなりの名歌手らしいです。
オケの出来も録音もよかったと思います。
指揮者アルブレヒトさんは、ワタシ自身は、名前は知っていても、演奏
には全くと言ってよいほど接点がなかったのです。ちょっと変わったこ
とを言うう才人で、N響に招かれたり読売日響の常任を10年近く務めた
りと、日本にも縁が深いかただったのですね。
ツェムリンスキーはまだ時々は聴くつもり。