休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

サルド/コルノー 2題

20191222(了)
サントラ『武器の選択』『フォート・サガン
  フィリップ・サルドアラン・コルノー


(1)LE CHOIX DES ARMES『武器の選択』
  ①~⑨
  作曲:フィリップ・サルド、指揮:ピーター・ナイト、ロンドン交響楽団
  ロン・カーター、バスター・ウィリアムズ(ベース)
(2)Fort Saganne『フォート・サガン
  ⑩~㉒
  作曲:フィリップ・サルド、指揮:カルロ・サヴィーナ、ロンドン交響楽団
  Xavier Gagnepain(チェロ)

  CD/2001/映画音楽/ユニヴァーサル/輸入/中古
  <★★★☆~★★★★>

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(1)サントラ『武器の選択』(映画日本未公開)
〈すばらしき映画音楽作曲家たち〉から; ・・・1981年製作の犯罪ドラマ。
引退したギャング(モンタン)とならず者(ドパルデュー)の対立を描く。
共演はカトリーヌ・ドヌーヴ他。サルドの音楽は、シンフォニック・スコア
にジャズの味付けをした極めて上質なもので、彼のベスト・スコアの1つだ
と思う。ロン・カーターバスター・ウィリアムスによるベースのソロにロ
ンドン・シンフォニーによる繊細かつ濃厚な音が重なり、複雑でドラマティ

ックな展開を見せる・・・

 

良くも悪くもベース2本を中心にした楽曲という印象。
ジャズベーシストの二人、どちらがどちらなんてわからないが、まあリード
しているのが名ベーシストのカーターでしょう。バスター・ウィリアムズと
いうと、たしか(ジャズ)クルセイダーズのベーシストだったひと?(そう
でした)オーケストラのほうはクラシカルで実にすばらしい。ラヴェル、ド
ビュッシー、ルーセルなんかを連想させる。特にラヴェルですかね。例えば
「ラ・ヴァルス」。なんだけれど、とにかくこのベース2本をメロディ楽器
として聴かせたくてという内容。ほとんどはピチカートなんだけどね、はじ
めと終わりのほうでほんの少しアルコ(弓で弾く)があって、その部分はま

るでイケマセンでした。

 

もう一押し。蛇足です・・・
こんなこと言っていいものかどうか憚られなくもないのですが、これほどま
でに複雑繊細なオーケストレーションが果たして映画に必要なんでしょうか。
クラシカルなんて生半可な表現では失礼なほどです。
2本のベースはそれなりで、名手二人には申し訳ないが、もっと正確なら、
点数はもっと上がったでしょう。
ともあれ管弦楽。ここまですごいのはほとんど記憶にありません。例えば
1967年のソ連版の「戦争と平和」(ボンダルチュク/音楽はオフチンニコ
フ)のオーケストレーションが、サントラ音源こそよくなかったが、もの
すごい〝情報量〟だった記憶がありますが、ワタシのチャチな記憶ではそ
れぐらいしか思い出せない。


(2)サントラ『フォート・サガン
〈すばらしき映画音楽作曲家たち〉から; 1984年製作のフランス映画。
第一次大戦前のサハラ砂漠を舞台に青年士官シャルル・サガン(ドパル
デュー)の活躍を描くドラマ。監督は「真夜中の刑事」等のアラン・コル
ノー。共演はソフィー・マルソーカトリーヌ・ドヌーヴ、フィリップ・
ノワレ…他。ルイ・ガルデルの原作小説をアンリ・ドゥ・トゥルンヌとガ
ルデル自身、監督のコルノーが脚色。撮影はブルーノ・ニュイッテンが担
当。フィリップ・サルドは、コルノー監督と「武器の選択」という犯罪ド
ラマでも組んでおり、こちらもロンドン交響楽団の演奏による極めて上質
なシンフォニック・スコアだったが、この「フォート・サガン」は更に深
遠かつスケールの大きいドラマティック・スコア。砂漠の神秘性を想起さ
せる繊細で美しいメインテーマが特に印象深い。サルドは初期の「すぎ去
りし日の・・・」「夕なぎ」「ひきしお」「離愁」といったスコアも素晴
らしいが、80年代に「武器の選択」「フォート・サガン」「ギャルソン!」

等に優れた映画音楽を提供していた時期が1つのピークだったように思う

・・・

 

(1)のベースに代わって、こちらのソロ楽器はチェロ。上記のベースほど
は出てこない。(1)とはまるで違って、チェロとオケの掛け合いには不自
然さがない。チェロ協奏曲をたくさん聴いて慣れているからだろう?と言わ
れるかもしれないが、そうじゃない。音程の正確性がまるで違う。

(なにもワタシが言い訳することもない・・・)
さて、こっちのほうの管弦楽曲は、フランスっぽさは乏しい、というか、ヨ
ーロッパらしさはあるが、どこの国というようなものはない。ミリタリータ
ッチが少々、エスニックさもほんの少々、といってもサハラ砂漠のイメージ
も実はない感じ。でも音作りはたいそう繊細で凝っていて、クラシカルでは
ある。敢えて言うなら、言語矛盾風ですが、幸せそうなマーラーかな・・・
最後は天に召されていくみたい、フォーレデュリュフレの「レクイエム」
の美しい箇所、あるいはサン=サーンスのSym.3の緩徐楽章なんかを連想させ
る。てことはフランスっぽさは乏しいなんて書いたくせに、やっぱりフラン
スかい?

 

ジャケット写真からして「フォート」はドイツ語なら「―フルト」、つまり

「砦」ぐらいの意味で、「サガンさんの砦」かな。

 

監督も認めて使ったんだからそれでいいのですが、ワタシの意見は、この2
つの作曲は、案外それぞれの映画とひょっとすると、あまり合ってないんじ
ゃないかということ。両曲ともオーケストレーションも曲調もすごく素敵な
んだが、とんでもなく凝った作りなもので、やり過ぎなんじゃないかと思っ
てしまう。かのジョン・ウィリアムズだって、ここまで凝ったスコアにはし
ていないと思う・・・ なんてね。映画のほうを全く知らないくせに、合っ
てないというのは申し訳ない。言い過ぎですよね。それはわかっているつも
りなのです、そう思わせてしまうほどなんだということ。

(2)など、ホントにこんなに優しい映画なの? (そうなのかもしれません

ネ)

 

*テレビが壊れてしまいました。