20190725(了)
―American Classics―
ローレム : 室内楽曲集
(1)クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための「夏の終わり」(1985)
①カプリッチョ 6:59 ②ファンタジー 7:42 ③マズルjカ 5:12
(2)フルートとハープのための「時祷書」(1975)
④朝課(宵課) 1:52 ⑤賛課(日の出) 2:47
⑥一時課(午前6時) 1:21 ⑦三時課(午前9時) 4:04
⑧六時課(正午) 2:51 ⑨9時課(午後三時) 3:06
⑩晩課(夕べ) 0:40 ⑪終課(日暮れ) 1:58
(3)室内楽アンサンブルのための「ブライト・ミュージック」(1987)
⑫ファンダンゴ 3:53 ⑬ピエロ 2:27
⑭ダンス/ソング/ダンス 5:46 ⑮アナザー・ドリーム 8:05
⑯ショパン 1:07
ザ・フィボナッチ・シークエンス
録音:2001年10月/英/サフォーク/ポットン・ホール Tot.59:59
<★★★★>
〔Naxos紹介文〕 少年期にラヴェルとドビュッシーに出会って人生が変わり、
米国現代音楽界を代表する作曲家に成長したローレム。声楽曲に焦点が当て
られることが多い人物ですが、当盤で聴く3つの室内楽の充実ぶりは驚きで
す。特に注目はカトリックの一日の祈りをテーマにした「時祷書」で、フル
ートとハープだけで表現する敬虔な感情、音空間の美しさは必聴です。カプ
リシャスなヴァイオリン独奏で始まる「夏の終わり」や、一聴しただけでは
タイトル"ショパン"との関連(実はピアノ・ソナタ第2番終楽章がもと)がわか
らないけれど、とにかくかっこいい⑯を含む「ブライト・ミュージック」の、
確かな作曲技術にも脱帽です。
(1)いいタイトルです。
①ヴァイオリン・ソロの意外な(気まぐれな、の意?)頑張りに驚き、ピア
ノとクラリネットが加わると、楽しい曲調に。中間部は時代を50年も100年
も遡ったようなロマン派の音楽。不自然じゃないですね。後半にアメリカが
ちょっぴり・・・
②ローレムに抱いていたイメージからちょっとはずれ、少しロマン派(ブラ
ームスの第3Sym.の有名なメロディ)を尖らせた感じの緩徐楽章。
③ショパンの国の? 素敵な三拍子。
通して聴いてみて、どこ発の音楽なのか、知らなきゃ想像もつかない。アメ
リカはいません・・・
(2)「時祷書」って、カトリック系の祈りの日課などのルーティンみたい
なもの?
知ったところでこちらにはあまり意味はありませんが、なんたって紹介文に
はドビュッシーの名がありますからね、そりゃ連想します。フルートとハー
プとビオラのための有名曲やシランクス・・・
フルートとハープはよく合うなどと昔聞いたことがありますが、まったくそ
の通りですね。たいそう美しい。祈祷には甘すぎたりトリッキーだったりで、
国の平和も、ましてや世界の平和も祈れていそうにない。せいぜい、自身と
神との重苦しくない関係・・・
多分タイトルに深い意味はないんでしょう。部分部分で、ドビュッシーの有
名曲にちょっとだけ似た感じのところもあった気はしますが、そういうもの
でもないのでしょう。
(3)フルートが含まれる小合奏のための音楽。ピアノが入っているのがミ
ソ。やはりフランス風味を残したラテン全般の感じ。
ピアノ、フルートが効いた⑭など、甘々だけど絶品。だらっと長い⑮もいい。
⑯のショパンは意味不明。なにか引用でもあるのかな。
どこを聴いても、アメリカっぽいと思えるようなところはほぼありません。
フランス風味を中心にした、灰汁のないヨーロッパ・ラテン全般の感覚でし
ょうか。甘ったるいところがふんだんにあるものの、決してしつこくないし、
かといって脳天気というようなものでもない。
ちょっと気取った程度の尖った表現も聴かれるも、ローレム特有の穏やかさ
や紳士然としたものが、最後の印象としてちゃんと残る。
随分前に交響曲から入ったローレムで、これが気に入ったからこそ時々聴く
ようになったわけですが、このアルバム(これらの室内楽)が、一番好きか
もしれないですね。
曲のよさも当然あるのですが、演奏も良かった。