休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『ベルファスト』

20221125(了)

映画『ベルファスト

 監督・製作・脚本;ケネス・ブラナー//ジュード・ヒル/カトリーナ・バルフ/
        ジュディ・デンチ/ジェイミー・ドーナン/キアラン・ハインズ
 音楽;ヴァン・モリソン
 2021年製作/98分/G/イギリス/原題:Belfast/DVDレンタル
 <★★★☆>

世評の高いらしい映画を観てみました。
 
北アイルランドの状況については、何か言える知識はありませんが、ベルファ
ストという町が、1960年代後半のがどうだったのかということはわかりま
した。ああいう状態の中でブラナー監督が幼少期を過ごしたということなんで
すね。あんな小さいころから、映画少年だったんだ。
 
父母の強い愛情以外にも、街のみんなに知られ見守られていることや、偏りの
少ない観方をもつおじいちゃん、おばあちゃんの価値観にもくるまれたような
状態で日々過ごしている。そんな中にも、いわば紛争が飛び火してくるような
形で、少年の日常にも入り込んできて、どんどんエスカレートする。
ベルファストを去ることになるまでの、黄金の日々が、作り物のイメージをあ

えて残しつつも、強く想像力を掻き立てるモノクロ画面の中に捕らえられてい

る。

映画館で観るカラーの映画はちゃんとカラーで映ってましたね、『チティ・チ
ティ・バンバン』なんか、どぎついほどに鮮やか。
 
北アイルランドの中でも、紛争の影響を受けて、いたって簡単に対立軸ができ
てしまうことについちゃあ、がっかりさせられるけれど、避けようもなく発生
してしまうこと自体は、ほとんどヒトの世の常。
ここじゃカトリック系とプロテスタント系の対立が大きいが、それだけだけの
話じゃない、ちゃんと一般化されていたようにも感じました。
 
ブラナー監督に当たる、一家の下の子の目を通して描いています。
そんな中で一家がどんなふうに生きていたか、自分の記憶だけに頼ることなく、
役者さんたちとも(子役の方たちとも)話し合いながら、作り上げたそうな。
一般化されてはいても、これが間違いなく自分史であり家族史であり地元史の

一ページでもあったんだという誇りと無念さのようなものが出ていたと思いま

す。感情移入よりはやはり理性の勝った観方にはなりましたが、良作。
まぁワタシにゃほかに言いようがない。

(デンチさんの足のむくみは演出なんだろうなあ。老母のも、ひどいむくみ

 なんだけど・・・これだと、いまならかなりいろんな薬を飲まされるな)

 

11月のものです。アップ、忘れてました。

小説『楽園の真下』/荻原浩

20221218(了)

小説『楽園の真下』/荻原浩

 2022年4月/小説/エンタメ(ホラー系?)/文春文庫/(2019年単行本)/中古(娘より)

    <★★★☆>

「日本で一番天国に近い島」が地獄になる

 巨大カマキリ来襲!

 
2800人ほどの人口があるが、たいていひとっところに固まっていて、大半
は未開の山や原生林、一部などサンクチュアリ(≒森林生態系保護地域)なん
て呼ばれている。
この架空の志手島、場所は奄美諸島あたりのイメージですかね。それとも伊豆
七島のほうか。大きさならわかって、
 面積は小豆島や宮古島と同程度、日本の島の中では二十番目ぐらい・・・
とありました。飛行場がない。最寄り港まで船でなんと十九時間もかかる。

自分の過去と少しは向き合うこともあるが、どこか投げやりな男、一応ジャー
ナリスト~フリーライター。自殺者が異常に多いことのほうが本来の調査対象
なんだが、とりあえずは金のための巨大カマキリ探し。
島にただ一つある研究所に、虫博士がいるってんで行って会えたのは、背が低
めのざっくばらんな女性研究者(准教授)。彼女とライター氏はカマキリ探し
に、島の奥へと向かう。
 
この本、娘が半年ほど前に送ってくれていたもので、ワタシが時々面白そうな
本を食べ物などと一緒に送るお返しに、逆に娘が読んで面白いと思ったものを
送ってくる。これは、考えてみるとかなり長い間続いている。カミサンも、そ
れを知っているものだから、娘に贈り物をするのはたいていワタシの役目こな
っている。正直なところ読んでいないものがいくつかある。
でも、仰天してそっくり返りそうになった本もありますね。すぐに思い出すの
がヒグマの話で(吉村昭の『羆嵐もけっこう面白かったけれど)、 いやもう

恐いなんてもんじゃない熊の話、増田俊也の『シャトゥーン ヒグマの森』

す。(何人かに薦めたことがあります)

アイツはホラーものも好きらしい。血かねぇ。カミサンと似てる・・・
このカミキリ本はワタシが虫や動物のことに少し関心があることを知っていて、
くれたのかな。色々な生物も出て来る。カマドウマなんてふつう出てこないの

で珍しい。昆虫の話は楽しい。

予定通り脱線しました。
これも恐怖譚かな・・・なんて思いながら、読み進めることになりました。巨
大カマキリと(当然巨大ハリガネムシと)人の自殺は関係あるんかいな・・・
ハリガネムシが脳に働きかける?(繁殖のために水へ誘う?)
誰も信じてくれない中、ネズミ、ネコへ感染する小さい原虫 トキソプラズマ
こいつは時には人間にも感染するなんて話が進行するうちに、夜、虫寄せのス
クリーンに、ついに理論上はあり得ないとされる70cm級が現れ、さらに大き
な個体(巨大カマキリ)が出るぞ出るぞーって雰囲気。
その次には、島での数少ない知人扱いになった男が川でおぼれるという事件が
起き、、、普通ならこの辺りから、怒涛の展開が待っているんじゃないか・・・
いや、確かにページターナーになりました。
そして、嘘!というようなどでかいのが出て来ます。ここまでデカイと恐い!
ストーリーをなぞるのはこの辺まででしょうか。
 

ハリガネムシって、考えてみると、興味もったことないなぁ、気色悪くてね、

触りたくない。

この恐怖譚は上にあげた『シャトゥーン』なんかと怖さの質なんかは似ている
気がするのですが、このハリガネムシの存在が独特の味付けになっている。エ
ンディングにも。
 
一晩で読了したわけでは勿論ありませんが、すいすい読めて、寝る時間に悪影
響はなし。

 

(付録)ワタシの写真ではありません・・・

 (実際はハリガネムシの大きさはこんなもんじゃない、カマキリやバッ

  タなどの体長の10倍なんてのはザラ)

  (これはカマドウマっぽいのに寄生したヤツ。思い起こせば、ワタシ

   が観たハリガネムシは真っ黒なものばかりでした)

映画『クライ・マッチョ』

20221213(了)

映画『クライ・マッチョ』

 監督・主演;クリント・イーストウッド
 2021年製作/104分/アメリカ/原題:Cry Macho/DVDレンタル
 <★★★>

1975年に出版されたというN・リチャード・ナッシュというかたの小説に
基づいているお話だそうな。
若い時にはロデオなどで派手に活躍した花形スターが、ある落馬から落ち目に
なって行く。家族も失って独り身になって長い。種付けなど、かろうじて馬に
関わってお義理で働かせて貰っている。今や過去しかない本当のジジイ。
一旦は雇い主から解雇を言い渡されるが、雇い主に事情があって、ある仕事を
やってくれるよう頼まれる。メキシコシティにいるらしい、雇い主の13歳に
なるはずの息子を連れ帰ってくれというもの。「だめもと」みたいな雰囲気。
メキシコシティには元妻がいるが、雇い主の事情も、元妻の事情もわからない
まま、引き受ける。
男の子を見つけて後、メキシコシティでのごたつく経緯、逃げ出してメキシコ
国境へ向かう道行の中で、ある町に長居する経緯、車のごたごたや土地の家族
と親しくなる話など・・・
 
イーストウッド監督にとって・・・
この話を知ったのが40年以上も前で、自分が出るのを前提にしていたもんだ
から、見かけも実年齢も合わないとお蔵にしていたが、気づけばちょうどいい
年齢?になってるじゃないか、ということで取りあげることになったんだって。
 
はっきり言って、もう90歳になろうとしているイーストウッドでは、歳をと
りすぎていたんじゃないでしょうかねぇ、よくも作る気になったもんだと思い
ました。設定としては、原作でも70歳ぐらいじゃないか?これを演じるとす
ればぎりぎり80歳ぐらい? ちょっとわからなかったが、メイキングを流して
いたら、イーストウッドの喋りの中にも「70歳」というのがあったみたいだ
った。「本」は実年齢に大分近づけたんでしょう。
 
その年齢(???)のジジイが、メキシコシティでのごたごたを引きずりつつ、
延々車を運転したり、事情で長逗留する街で、荒くれ馬を乗りこなしたり、ガ
キどもと彼らのオバアチャン一家と仲良くなったりする。
本当に危ないというアクションシーンやサスペンスシーンは、スルーっと通り
過ぎて行くので、そういう盛り上がりはほとんどありませんでした。その力の
入らなさがまるでリアルじゃないもんだから、特異っちゃあ特異。
そして、これを書いちゃいけないのかもしれないが、背の曲がり方、脚の運び
かた、尻の肉の少なさ・・・ これは演技でもなんでもない。本当にジジイそ
のものでね、こればかりはものすごくリアルでした。
 
悔恨は混じっても達観の域にも近づいている爺さんの考え方、感じ方にドラマ
を添わせているように思えてなりませんでした。ほとんど重複ですが、脚本家

イーストウッドの今をちゃんと見せるような書き方をしたんじゃないでしょ

うか。どうでしょう。

 
 
 
1/4 食事中にテレビで『スペース・カウボーイ』が流れ始めまして、今日は
 まだ休みなので、ゆっくり観てしまいました。SFではなく現代の宇宙もの。
 イーストウッドには珍しい題材。道具立ては新しくはないけれど、元気い
 っぱいの映画作り。まだ自分はジジイじゃないと思っているジジイたちの

 奮闘記。

 空も直近の月もきっとこういう疑心暗鬼の勢力争いが続くに違いないと、悲

 観的に考えてしまうほうですが、それはともかく、観終わって、ウキウキと

 犬コロの散歩に出かけました。

 

 以下脱線ついでの写真・・・

   (これは以前載っけたかもしれない、秋ごろのものです、近所の公園)

   (こんなところじゃ普通しませんて・・・て、したのがいるんだろうねぇ)

               (来月5歳になります)

ガーシュウィン/コープランド セプトゥーラ

夫婦だけではない、朝昼兼用の食事(鍋)があまりに遅かったので、本来

夕食の時間なのですが、まだ腹が重い。

今年初めてのアップでもしようかと・・・

今年ものんびりネタ作りできますように・・・

楽しく鑑賞ができ、感想の文章がなんとかハチャメチャになりませんように

・・・ なにせ頭の体操のつもりですので。

本年もどうぞよろしく。

 

 

20221210(了)

金管七重奏音楽集 第7集

ガーシュウィンコープランド セプトゥーラ

①-⑧ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937): パリのアメリカ人(1928)            

             (S・コックス、M・ナイトによる金管7重奏編) 18:41

   ⑨アーロン・コープランド(1900-1990): 静かな都会(1939)                                            (S・コックス、M・ナイトによるコールアングレと金管7重奏編) 10:15
⑩-⑫ガーシュウィン: 3つの前奏曲(1926)                                                                                        (M・ナイトによる金管7重奏編) 7:03
⑬-⑳コープランド: バレエ組曲「アパラチアの春」(1944)                                                             (S・コックス、M・ナイトによる金管7重奏編) 24:40
 
   録音:2019年11月5-7日、Tot.60:52
      ロンドン、ハムステッド・ガーデン・サバーブ、セント・ジュード・オン・ザ・ヒル教会
   CD/Ⓟ&ⓒ 2021 Naxos Rights(ドイツ製)、輸入
   <★★★★>

 

《ナクソス社の惹句から》 ・・・アメリカを代表する2人の作曲家、ガーシュウィン
コープランドの作品集です。「パリのアメリカ人」はガーシュウィン自身のパ
リ滞在に基づき、1920年代には世界で最も進んだ都市の一つパリの活気と喧騒を
音で描いたもの。かたやコープランドの「静かな都会」は昼間は喧騒と活気にあ
ふれるニューヨークの夜の静寂の中で織りなされる人間模様(もとは劇付随音楽)
を描いた音楽。この対照的な2作品を彼らは絶妙なアレンジによって演奏。原曲と
は異なる魅力を見せています。そしてガーシュウィンの「3つの前奏曲」を経て、
コープランドの「アパラチアの春」でアンサンブルの輝かしい妙技が炸裂・・・
 
 
車の中のみならず、職場でも(CDラジカセで)幾度もかけていました。
でも実は、家のパソコンでかけたのが結構よかったみたい。飽きもせず、一体幾
度聴いたことになるのやら。
ま、ダイナミックレンジが広くないので、音量を少し下げておけば、どこでかけ
てもあまり抵抗がないわけですが、ウチのパソコンだと、ホールトーンが妙に合
いました。なんでだろ。めずらしいケースです。
 

①-⑧『パリのアメリカ人』

いつも思うが、このグループのアレンジが実に上手い。しかも7人が7人とも技

術的に優れているのも勿論だけれど、あちこちの表現がこの編成で目いっぱい派
手で楽しい。ガーシュインではものすごく有効。ジーン・ケリーレスリー・キ
ャロンが出てきてくれるわけでもなく、まとまりにくいく曲であるだけにね。
音色の単調さに負けない演出、とでもいうべきものだと思う。
 

⑨『静かな都会』

よくもまあ、オーケストラでもないのに、こんな素敵な音色を醸し出せたもの。

静かな都会とはどこを指すのか、勉強不足で知らないんだが、ワタシには、都
会ではなく、遠くに山も見えるが、緑がいっぱいの牧場やプレーリーの春の早
朝といった感じ。あくまで個人的な印象です。
 

⑩-⑫ 『3つの前奏曲

色んな飲食や表現に拘らず欲張らず、わりとストレートなアレンジを施した、

という印象。あえて言うなら、黒人ぽさ、でしょうか。特に⑪と⑫。
 

⑬-⑳『アパラチアの春』

大好きな曲です。

この曲は、アメリカ合衆国の最高のクラシック作品の一つといっても過言じゃな
い気がします。たしか室内オケのサイズのアレンジもありますが、これはワタシ
にはやっぱりフル・オーケストラで聴きたい。さすがに7つの金管では規模感は
難しかった。でも、その代わり、叙情では決して負けていないし、本来ならズド
ーン!とばかりに鳴るところが頭の中ではちゃんと鳴っていたように思えたの
ですが、、、さて、どんなもんでしょう。
 
「3つの前奏曲」以外は、二人での編曲。
よく考え抜かれようで、抜群のバランスの良さと演奏効果を生んだのではない
でしょうか。文句なしに楽しめ、4曲に甲乙はつけがたかった。
このグループのCDを聴くのは、5枚目か6枚目かになるはず。このグループの
録音でこっそり避けているのが、バロックやそれ以前のもの。まあそっちは多
分今後も聴くことはないでしょう。
毎回思ってきました、金管7人だけの奇跡のサウンド! 今回も期待にたがわ
なかった。

 

一点、文句がなくもないことがありまして、音楽自体とは関係ないのですが、

ジャケット写真はこれではだめ、というか、つまらない。⑨のイメージなんで

しょうか、ならばまあそれでいいかぁ。

佐藤正午/『月の満ち欠け』

20221204(了)

佐藤正午/『月の満ち欠け』

  2017年/小説(ミステリー系)/単行本/岩波書店/中古
  <★★★☆>

そこそこ長く積読していたものから。もっと古いものがいっぱいあるのに。
ただ、古いものは新し目のものより活字が小さくて、正直シンドくなっちまい
ます。オフクロの緑内障は、まああの歳になればしょうがないかと思わぬでも
ないが、仕事場の同僚(けっこう若い)がスマホを目の前10cmほどに近づけ
て読んだり操作したりしているのを見ると、目を悪くすると、人生に大きな影
響が出るよって、つい言いたくなることがあります・・・
で、、、これは、パラパラと見ているうちに読み進めてしまいました。

これは年1回出る雑誌「このミステリーがすごい!」(2018年版)の紹介文で
す。さがして見つけました。雑誌は2017年末に買ったはずです。
国内の18位。紹介文が書かれるぎりぎりの順位。謎解きとしてはどうなんだ
ろうというお話なものだから、低かったのかもしれないですね。

本は「このミス」に載ったから選んだわけじゃない、活字の大きさでもない、

ただの気まぐれだったはず。

 
この紹介文には実はちょっと違っているところがあるものの、まあ大雑把には
こんなところでしょうか。厳密にどうこうという必要なんぞないけれど、所謂

ミステリーとは違う。一見ホラーまがいで、捻ってある。ちょっと前に観た佐

藤正午原作の映画化作『鳩の撃退法』も、これは映画しか知らんが、そういや、
とてもテクニカルなもののようでした。

補足するなら、、、
二番目の瑠璃、小山内の娘の友人の娘、が長じて女優緑坂ゆいになるが、その娘
が瑠璃で、順番的には三番目の小沼瑠璃(希美)の次。
しかし母親の緑坂ゆいは、妊婦時の予告夢から、生まれ変わりのことを妄想して
いて、小山内に説明を試みている。前世の記憶。
小山内は、聴く耳は持つが(わかっている気がしながら)同意をためらっている。
前世の記憶を確かめる材料になるかもしれない話が出てくる・・・
 
たとえば、【瑠璃も玻璃(ハリ)も照てらせば光る】なんていう諺の類。
  「瑠璃」は青い宝玉又は色付きのガラス、「玻璃」は無色の水晶又はガラス。
  いずれも貴重な宝玉。(そのような宝玉は光が当たれば光り輝き目立つよう
  に) 才能のある者はどこにいても目立つ、また、機会さえ与えれば活躍する
  ということ・・・
これがちょくちょく出てくるんで、ワタシにゃそれが、ストーリーともっと絡む
んじゃないかと思っていたのだけれど、それを知っていることが、ある種の証と
して使い得るというぐらいの扱いでした。
 
紹介文には三番目の瑠璃まで記述しているが、だから4番目の瑠璃もいる。
4番目の瑠璃はエッと驚く発言もします・・・
ただその発言内容についちゃあ、回収はされない。
ともあれ実に、引っ張りじょうずな(リーダビリティというんでしょうか)作家
さん。でもね、上掲雑誌紹介文に、けっこう語られちゃってますからね、ストー
リーにかかわる話はもうやめておきます。

この作品も映画化されて、今頃は封切られている。
新聞にCMが打たれてました。よく見かける役者がぞろぞろ。ストーリー内では
何人もの7歳ぐらいの女の子が出てくるんだが、その配役は載っていないよう
です。本ではみんななかなか印象的なんですが、出て来るんだろうが、あまり
演技者としてじゃないんだろうか。いや、そんなはずはないだろう・・・ 
 
最後に、、、これ書いちゃあいけないかもしれませんが、、、ホラーめいて始
まったこのお話は、極めて謎めき、変則ながら純愛ものとして締めくくられま
した。男性軍はちょっとキャラクター的には弱いでしょうか。まあしょうがな
い気もします。小説『鳩の撃退法』とも、どこか通底する雰囲気があるのかな。
そんな感じがあるかもしれないと思いました。

独特のファンタジックな小説感。面白かった。

 

 

ストーリーのメモはうっちゃらかしたのですが、どうもうまくまとめられませ

んでした。

 

このアップが今年の最後になりそうです。

権代敦彦/猿谷紀郎/一柳慧

3曲ともオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱作

 

20221202(了)

権代敦彦/猿谷紀郎一柳慧

(1)権代敦彦(1965-)/愛の儀式 ― 構造と技法― 作品70 18:02
         宮田まゆみ(笙)
(2)猿谷紀郎(1960-)/ときじくの香の実 19:39
         林英哲(和太鼓)、赤尾三千子(能管)
(3)一柳慧(1933-2022)/音に還る―尺八とオーケストラのための― 17:15
         三橋貴風(尺八)
     オーケストラ・アンサンブル金沢
  指揮:岩城宏之
 
  全作品 2002年 OEK委嘱・世界初録音
  ライヴ録音/2002年3月14-16日/石川県立音楽堂 コンサートホール 56:04
  CD/現代音楽/Ⓟ&ⓒ 2003 Warner Music Japan/邦盤/中古
  (1)&(2)<★★★△、(3)<★★★★>

(1)権代敦彦/愛の儀式 ― 構造と技法―

sensualな方向かいな、それにしては「構造と技法」というのはヘンか、

なんて初めは思ったりして聴いたのですが、どうも違う。
作曲者は愛について音と結びつけつつ解説してくれています。7つのシーンに
分かれていて、
 1.愛のささやき 2.愛のかがやき 3.愛のはじまり(愛の交唱)
 4.愛による一体化 5.愛の捧げもの 6.愛の教え 7.愛の成就
となっている。(・・・)
スピーカーの音の傾向をいう時、昔、「ドンシャリ」なんていう言葉が出てき

て覚えてしまった。(今でも使うのかな) ざっくり言えば、上と下、つまり高

音と低音がよく出ていて、中音域が足りないことを指した言葉だったと思う。

その感じなのです。

楽器をドンとシャリに分けて、小さい音からじわじわと細かいパッセージでも
ってうごめきつつ、時間をかけてクレッシェンドしてゆくことを何度か繰り返
す。長くかかって盛り上がることも、ごく短い山であることもある。
楽器の組み合わせが変ってゆくので、音色もいろいろ。単調ではないと思う。
「笙」は愛の権化。その独奏者が載っているけれど、笙だけが目立つわけじゃ
ない。最後だけはデクレッシェンドで、消え入るように終わる。
いつでも楽しめるかどうかというと、ちょっと怪しいけれど、だんだん耳に馴
染んできました。
 
(2)猿谷紀郎/ときじくの香の実
 ・・・天に響く笛の音、心を奮わす太鼓の音、この両者がオーケストラの音
 と融け合ったとき、我々を幻の霊果、ときじくの香りが満たしてくれる・・・

などと「記紀」にあって、昔から不老不死を願う幻の聖樹の実ということらし

い。

 
繊細なオーケストラサウンドの中に、古風な横笛の音(能管)といささか単調
な和太鼓が入り込んでいる。幻想譚ふうな、あるいは妄想的な音楽で、日本人
には馴染みのある感じですね。たとえば、琵琶はないけれど、耳なし芳一の話
なんかにも合いそう。
中盤ではあの林英哲の和太鼓乱れ打ち、みたいなのがありました。聴かせどこ
ろの一つだったんでしょう。協奏曲で言うところのカデンツァに当たる。
和太鼓協奏曲やね。でも、ここでの和太鼓は一つだけのはず(ジャケット写真
がそうでしょう)。微妙な音の揺らぎはあっても、音程は基本一つだけなので
飽きてしまう、、、協奏曲は言い過ぎですかね。決して嫌いなサウンドではな
かったのですけど、好きにもなれなかった。
 
(3)一柳慧/音に還る―尺八とオーケストラのための― 
本命です。
3曲ともオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱作。
実は10月に亡くなった一柳慧のものをなにかと探したんですが、安いのが
見つからなくて、やっと見つけたのがこれ。
複数の追悼文を読んで、自由を問う冒険家で、非常に守備範囲の広い作曲家
兼ピアニストだったなんてことは、初めて知ったぐらい。ジョン・ケージ
ジャズや即興、雅楽オノ・ヨーコとの結婚、なんてことも。現代音楽のピ
アニストを務めることが多いことぐらいは知っていました。 
まとめると、過去へのこだわりの少ない芸術上のアナーキストだったようだ、
というのが収まりがいいみたい。
こりゃ聴くのもなかなか大変だけど、何か聴いてみるか、と・・・
一曲だけですが、ものは試し。サンプラーとしてはどうなのか、なんて知っ
たこっちゃない。
 
作曲者は影響を受けたらしい詩人の言葉なんぞひいているが、いみじくも自
分で書いているように、「読み替え」やね。
所謂和風な感じ(尺八)とバタ臭い感じとがせめぎ合ってるのか、融け合お
うとしているのか、どこか日本人の宿命と親しみを感じました。
とにかくあっさり味じゃない。楽器ごとに独奏を聴かせるが、全体としては
室内オケにもかかわらず緊密で、和風の風通しのいいすかすかした感じはな
く、かなりカロリーが高い。そこらへんが面白い。気に入りました。
 
色んな試みをされ、仏教(音楽)にも近づかれたようだけれど、その仏教っ
て、日本でのものじゃなく、インドとかアジアとかのご本家のほうのものな
んじゃないかなぁ、なんて思いました。
厳密な構造の楽曲の中に、雅楽の混沌を忍ばせたり、指揮者がタクトを振る
のをやめ、演奏者の自由に任せる部分を織り込むなんてことをやったことで
も知られ、そういう部分は、録音されてもまずもって真価がわからない気も
する。(そういうのって、作曲者や演奏家だけでなく、聴き手にもそれなり

の知識って、必要とされるんじゃない? そうでもなくて、ただ聴けばいい

の?そんなもの?)

けれど、ま、なにかまた探してみることにしましょう。聴く機会が来るとい

いね。

ともかくこの(3)は当たりでした。 

 

80年代中盤、金沢に4年ほどいまして、当時は非常に忙しかった。初めての

管理職、小さい子どもたち3人、死期の近いオヤジの大阪への見舞い、など
など。遊びはたまのゴルフ、子連れでの映画、岸壁や河口での釣りぐらいだ
ったでしょうか。釣った魚は必ず食べてました。ああ、レンタルビデオ屋に

は行き始めてましたね、たしか。コンサートにはほとんど行けていなかった

ように思う。

調べてみるとオーケストラ・アンサンブル金沢は1988年からだから、このオ
ケは聴けるはずはなかったわけですが、よしんば、もしできていても、聴き
には行けなかったでしょう。
 
このオーケストラ、多分一回しか聴いたことがないと思います。名古屋でだ
った気がします。指揮は同じ初代音楽監督の岩城さん・・・
岩城さんの本、ニ三冊読んだことがあって、飾らずユーモアたっぷりで、気
に入ったものでした。それらよりもっと前の本が一冊、読みたい本の中にあ
ります。いつか読めますかねぇ、もう読めないかも・・・
 
さて、いつものように脱線して、、、このオケの音楽監督だったこともある
井上道義さんが、これを書いている今、新聞に連載されてます。
ちょっと高慢ちきな感じなので、実はうっちゃってきましたね。もっとも、
演奏会で聴いたことはあります。
新聞の連載記事によるととてもオモロイ御仁だったのですね。プラス、あの

お顔の謎がやっと解けました・・・ それに、いかにも指揮者らしい! 毎日

切り抜いてファイリングしています。

ワタシ、二十歳前後だったと思うが、井上がウィーン・モーツァルテウム管
弦楽団と録音した交響曲集(勿論モーツァルトのもの)が出たのをうっすら
覚えています。レーベルはスープラフォンあたりではなかったか。ラジオを
通しても聴いたことはなかったような気がします。
で、あと2,3年ほどできっぱり引退する気でいらっしゃる。

 

映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』

20221130(了)

映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』

  ロジャー・ミシェル監督//ジム・ブロードベントヘレン・ミレン
                 /フィオン・ホワイトヘッド
  音楽:ジョージ・フェントン
  2020年製作/95分/G/イギリス/原題:The Duke/DVDレンタル
  <★★★☆>

イギリスの1961年のできごとの映画化。とても説明的な邦題・・・
60の爺さんケンプトン(ブロードベントさんは少なくとも70には見えるか
ら確かに爺さんだけどね)は、一応タクシーの(よく喋るウルサイ)運ちゃん
であるだけでなく、売れないけれど脚本を書いている。脚本には死んだ娘の影
響が濃いよう。教養高いようなのは文学系の素養からなんでしょう。
 
テレビ受信料はBBCを観ないのならば要らないだろうと、BBCの線を外して刑
務所に入れられるというのが始まり。NHKについては日本でも受信料を払わな
い人が多くてよく話題になる。これについちゃあ、まあいろいろな意見もある
でしょうが、ともかく似てるんですな。
 
で、ゴヤの『ウェリントン侯爵』が14万ポンドと聞いて、ケンプトンはその
身代金のようなものでもって、あるいは見つけたものに謝礼が10%ぐらい出
るというのでも十分大きい。それでもって受信料が払えない年寄りの役に立つ
に違いないという考えで、絵を盗んじゃう。やすやす盗めちゃうのが妙なんだ
が、実話ってんだからしょうがない。
多くは盗んじゃってからどうなるかに力点を置いて描かれる。
 
ケンプトンの奥さんは見かけも考え方も固く地味。息子(次男らしい)は優し
い性格で二十歳そこそこ、ケンプトンの影響が少なくない。この家族のユニッ
トのほかには、ここをもう出ている長男と彼女、奥さんがお手伝いさんとして
務めている裕福な家の奥さんなどが絡む。
ケンプトンは年金暮らしのよう。奥さんもそうかもしれない。年金が少ないか
らだろう、仕事の口の話題が多い。
日常がとても明るく面白く描かれていて、ついつい頬が緩む。
 
この盗みには裏があるが、それはともかく、ひょんなことから盗んだ絵のこと
がバレてしまって、とうとう裁判になる。裁判は盛り上がりますな。
 
教養をさほどひけらかさないケンプトンの気の利いた皮肉やユーモアたっぷり
の台詞が楽しい。まあ多くがはぐらかしともいえるんだけどね。表情もゆたか。

ほとんど仏頂面で心配性の奥さんと好対照。(さあ、どうだ、ヘレン・ミレン

のこんな役!って感じ)

 
この事件の影響でかどうか、英国では1985年には、75歳以上のヒトから
はテレビの受信料は徴収しないことになったというテロップ。

(単にテレビ、と出た。BBCだけの話じゃないんやろうか、その辺はよくわか

らず)

 
まだ最近だもんだから、こんな記事(朝日)覚えていました。

 

ワタシ、受信料のことなどで議論する気はないんですが、ここで物申してい
る新聞協会の「日本新聞協会メディア開発委員会」なんてものは知りません
で、いったいどんな力(影響力)があるんだろう・・・
もの申している側の繰越金に関する言及、並びにジャンルに関する言い草に
も、首をかしげざるを得なかった。これが新聞社どもの総意?
 たったこれだけの記事ではよくわからないですけどね。
 
(追)
音楽は、多くがソース・ミュージックだったので、感想の対象外ですが、ほ
んの少しだけ優しいオーケストラ・サウンドが聴かれました。ジョージ・フ
ェントンの名を見て納得。代表はエンドタイトル。