休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『ガンズ・アキンボ』 

20210912(了)

映画『ガンズ・アキンボ』 

 ジェイソン・レイ・ハウデン監督//ダニエル・ラドクリフ/サマラ・ウィービング
 2019年製作/98分/R15+/イギリス・ドイツ・ニュージーランド合作/
 原題:Guns Akimbo/DVDレンタル
 <★★☆>

f:id:kikuy1113:20210921000414j:plain

<映画.com>解説から ; ・・・ゲーム会社でプログラマーとして働くマイルズ
は、ネットの掲示板やコメント欄に過激な書き込みをして鬱憤を晴らしていた。
ある日、マイルズは本物の殺し合いを生配信する闇サイト「スキズム」に攻撃
的な書き込みを繰り返し、サイトを運営する闇組織のボスを怒らせてしまう。
組織に襲撃され気を失ったマイルズが目を覚ますと、両手にボルトで拳銃が固
定されていた。さらに元恋人も人質にとられたマイルズは、「スキズム」で最
強の殺し屋ニックスに24時間以内に勝てば解放すると言い渡される・・・
 
ゲームをプログラミングする人間が、まるでゲームの中のような世界に放り込
まれて、「まるで仮想現実のような」現実を生かされる。それを、現実と半ば
知りつつも観ている人間がいる。「あたかも仮想現実のように」そこで繰り広

げられる殺し合いの世界を、多くの人間がリアルタイムで一喜一憂しつつ楽し

む。

作る(配信する)側の思うつぼで、それがどんどん世界中に広まって、更にす
さまじい数の人間が楽しんでしまう。
ありがちなパターンながら、オチも一応ある。
 
ストーリーやこういった世界を造り出して配信する連中は、確かに闇組織っぽ
く、ヤクザの副業風。でもこういうありようもいかにも陳腐なパロディー。
皮肉満載。警鐘もあるけれど、むしろおちょくり。
でもまあ、「今考えつかないで、いつ考えつくの!」と言わんばかりのストー
リーであり、映画ですね。
本としては読んだことはないように思いますが、スラプスティックSF短編小
説といった趣でした。
 
実はカミサンが、「ハリー・ポッター」のラドクリフだからというので借りた
もの。結果、カミサンのコメントはなし! なんかちょっと怒ってたみたいでし
た。(後で聞くことになったところ、意外や、案外楽しかったらしい。)
ラドクリフといえば、脱力するほどバカバカしくもオモロイ『スイス・アーミ
ー・マン』という出演作があって、ここに感想も書きました。案外それで(こ

んなのにも)出てくれるんじゃないかと出演を打診されたのではないか・・・

(これは妄想です)

シー・ホーク:エリッヒ・ヴォルフガンク・コルンゴルト作品集

管弦楽の楽しみ’の延長線上にあります

20210830(了)
“クラシック・フィルム・スコア”シリーズ  "CLASSIC FILM SCORES" SERIES

シー・ホーク:

     エーリッヒ・ヴォルフガンク・コルンゴルト作品集

THE SEA HAWK::THE CLASSIC FILM SCORES OF ERICH WOLFGANG KORNGOLD
 ① The Sea Hawk: Main Title; Reunion; Finale シー・ホーク 6:53  1940
 ②Of Human Bondage: Nora's Theme (未公開)人間の絆 4:21   1945
 ③The Adventures of Robin Hood: March of the Merry Men; Battle 
  ロビンフッドの冒険 4:01                   1938
 ④Juarez: Love Theme (未公開)革命児ファレス 1:51      1939
 ⑤Kings Row: Main Title  嵐の青春 1:43              1941
 ⑥ The Constant Nymph: Tomorrow  永遠の処女 6:07       1943
 ⑦ Captain Blood: Overture 海賊ブラッド 2:58          1935

 ⑧Anthony Adverse: No Father, No Mother, No Name  風雲児アドヴァース 2:39

                                 1936

 ⑨Between Two Worlds: Main Title; Mother and Son(未公開)霧の中の戦慄 5:30

                                 1944

 ⑩Deception: Main Title  愛憎の曲 1:33               1946
 ⑪Devotion: The Death of Emily Bronte  まごころ 4:05         1946
 ⑫Escape Me Never: Main Title; Venice, March; Love Scene; Finale 
  (未公開)嘆きのプレリュード 8:14               1935
 
  Composed by Erich Wolfgang Korngold(1897-1957)
  チャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
  ⓒ 2010 Sony Musuc Entertainment/RCA Ⓟ 1972 RCA//映画音楽/中古CD
  <★★★☆>

f:id:kikuy1113:20210917175147j:plain

1970年代にチャールズ・ゲルハルトがロンドンのナショナル・フィルハーモニ
管弦楽団を指揮して録音し、米RCAレーベルがリリースした一連の“クラシッ
ク・フィルム・スコア”シリーズのLP(1980年代に米RCA/BMGレーベルがCD化)
のうち、以下の6枚が米Sonyレーベル(RCA Red Seal)から廉価盤CDとして再
発された。以前のCDの大半は既に廃盤となっており、この重要なシリーズが新
しい映画音楽ファンにも容易に入手可能となったのは画期的なことだと思う。
(2011年3月に第2弾がリリース予定)。
                 《すばらしき映画音楽作曲家たち》から
 
このコルンゴルトものは、シリーズ内でもエロール・フリンものなどと重複し
ているし、MARCO POLONAXOSの中にスコアのReconstruct ものがあったり
してやはり重複したので、同じ曲を何度も聴いてしまってます。もうどれを聴
いたことがあるとかないとか、よくわからなくなっていますが、どうやらこの
アルバム自体は未聴のようなので、手に入れてみました。
 
①はもちろんダブリで、よく知っています。快活なメインタイトルのマーチは
いささか食傷ですが、それ以降は、時代を感じさせるべたべたしたルバート、

リタルダンド、まあ「ずりあげ/ずりさげ」なんですが、かえって新鮮です。

以下簡単に・・・

②美しくロマンティックなメロディがよろしい。
③ほとんどマーチだけなのがしんどい。
④ラブシーンそのもの。
⑤全体がファンファーレふう。
⑥それなりに複雑なドラマなんでしょう、いろんな楽想が出てきて、印象は一
言ではすまない。でもそのごちゃごちゃ感がちょっと小うるさい、かな。それ
に、のっぺりしたコントラルトの歌(歌手の名はない)が入るのが、苦手。
⑦やや変則なリズムのファンファーレのあとはテンポのいい楽想が並ぶ。ファ
ンファーレが乗りにくい・・・ 全体的には勇ましい感じ。
⑧序曲でもエンドタイトルでもないが、強いドラマ性を感じる。
⑨この曲はよく知ってます。「ずりあげ/ずりさげ」(あるいはスラー?)が
すばらしい。⑫と並び、このアルバム中のベストチューン。
⑩「愛憎」というのは、詐欺やペテンの結果ということね。この曲も覚えては
います。スッキリ入ってくるいいメインタイトル。
⑪「献身」:「エミリー・ブロンテの死」となってます。ほんのちょっと後期
ロマン派の匂いがする。
⑫どんな映画か全くわからないけれど、8分強にまとめた組曲ふう。様々な楽
想が一つ一つちゃんとまとまっている。ほんとはね、みんなこんなふうにまと
められたものばかりだといいんですがね、、、ないものねだりです。
 
いいアルバムでした。
この一連の録音は、かなり前からポツリポツリ手に入れ始めて、聴きたいと
思えたものはだいたい聴きましたかね、これで。
1930年代から1950年代頃までのいわゆるクラシックフィルムのうち、優れた
管弦楽曲を、埋もれるのは惜しいということで、スコアが失われているもの
はreconstructionなどしながら録れなおしたもの。フルオケを駆使している。
確か、ここでプロデュースしているジョージ・コーンゴールドが、ゆかりの
コルンゴルトのものを録音し始めたのが、いろんな作曲家のものにも広がっ
ていったとかいう話だったと記憶しています。
今の映画音楽とは全く違って、相当オーバー、大時代的だけどね、しっかり
書き込まれたスコアです。
ジョン・ウィリアムズなんかに見事に受け継がれてます。E・W・コルンゴル
トというオーストリアのクラシック系天才的ユダヤ人作曲家が、アメリカの
映画音楽作曲家としても手抜きをせずに、真面目な作曲をした、その業績が
このCDだけでもある程度まとめて聴けるわけです。

f:id:kikuy1113:20210917175249j:plain

 

映画『グリーン・ブック』

20210910(了)

映画『グリーン・ブック』

 監督:ピーター・ファレリー//ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ
 2018年製作/130分/米映/原題:Green Book/DVDレンタル
 <★★★★>

f:id:kikuy1113:20210915183716j:plain

アメリカの人種差別問題を、黒人/白人に代表させて描いているらしいとい
うことで、いささかならず遠慮してたんですが、どうやらエンタテインメン

トとしてちゃんとできている作品だと聞いて、観たいリストに入れていまし

た。

これは1960年台に入ったころの実話を、運転手のゆかりの人が脚色したもの
のよう。
 
ソ連で本格的にクラシック音楽の教育を受けた黒人ピアニストが、意を決し
て南部に20日間だかの長い演奏旅行に出る。ニューヨークの豪華な住まい
で一人寂しく暮らす彼は教養高く、人種差別のことは無論よくわかっている
つもり。

 

アノトリオなんだが、編成がふるっていて、ピアノとベースとチェロ。

ドラムスがない。実話がそうなのか、映画だけなのか実は知らないのですが、

音楽としてはこれがなかなか微妙というか、不自然な甘さがあるのがミソじ

ゃないでしょうか。

チェロ奏者はクラシック系でロシア人。ベースは何人だったか忘れた。共に
白人。音楽は、クラシックっぽい曲にジャズ系のアレンジを施し、かつ、も
とはクラッシックなんだよ!とわざわざ主張し戻している(こんな表現ある
かな?)みたいな感じ。まあこの音楽についちゃあ、殆どめんどくさい話は
出てこない。正直言ってしまえば、このドラムスのない音楽は60年代じゃ

あ、MJQやジャック・ルーシェ・トリオならばまだしも、すでに時代遅れに

感じられたような気がするのですが、どうだったんでしょう。

黒人のクラシックの演奏家ソリスト)というのは、考えてみると、女性歌
手と男性指揮者以外にはほとんど知りません。もろ(教育)格差だね。ワタ
シの知識が古いだけで、そうでもないのならいいんだけど。

 

さて、戻りまして、彼の運転手になるのが、家庭的なイタリア系の少々がさ

つな男。やや太めで恰幅がいい。教養は高くなく言葉遣いが汚いが、悪人じ
ゃない。世の中の仕組みが一応わかっていて、はったりが利き、がさつなわ
りに価値感はいたって柔らかくノーマルで、イデオロギーは特に濃くなく、
人種問題に関しても、偏った思い込みはない。
モーテンセンはきっと役作りとしてわざと太ったんやろな)
 
チェリストやベーシストも一応一緒に旅行はしているが別の車。黒人ピアニ
ストと運転手兼身の回りの世話係の基本2人旅が描かれる。この二人同士で
の会話や行為のズレや考えのぶつかり合いと、どこへ行ってもついて回る黒
人蔑視や、黒人だけのセパレートされた妙に息苦しい社会。
そういったものが、暗くならないように(もう状況だけで十分暗いからね)
描かれていました。
問題にぶつかっては二人で何とかクリアしてゆく。危なっかしいコンビ。
でも、運転手が主に活躍するのね。彼の意外なほどの柔軟性(?)が演奏旅
行をなんとか破綻させないで進める。それがレイシズムが厳然としてある世
界での出来事を、エンタテインメント(≒ユーモア)に見せて(描き替えて)
通り過ぎて行く。二人の理解のしあいも進むので、想像はついたけれど、い
いエンディングになりました。大団円にすぎると言いつのったヒトがたくさ
んいたであろうことは想像に難くないけれど、なに、そんなことを言うヒト
たちだって、手をこまねいているんだから、言わせておけばよろしい。最後

に集った人たちにもちゃんと理解が生まれたんじゃない?という「ストーリ

ー」を感じさせてくれたんだから。

 
・・・と、通り一遍。ロクでもないことしか書けません。
結局は、気取って我慢することを体得している黒人と、気取らず出来るだけ
なんにでも上下を付けないでストレートに対応する運転手との、道中の会話
ってことになるんじゃないですかねぇ、一番面白かったのは。そうすると、
多くが車の中ってことになるか。
黒人のための旅行用ガイドブックの名が「グリーン・ブック」という。抜群
のいいタイトルでした。

 

歌劇『モーゼとアロン』/室内交響曲第2番

ブーレーズ・コンダクツ・シェーンベルク

                  (10&11/11)

Pierre Boulez conducts Schoenberg(1874-1951):

  Chamber Works・Orchestral Works・Vocal Works

 

【CD10】 49:13

(30a)歌劇『モーゼとアロン』第1幕 D1〜D9 

 ①情景1 モーゼを召す喚び声 8:19
 ②情景2 モーゼ荒野にてアロンと会う 7:13
 ③情景3 モーゼとアロン 往きて、民に神の福音を告げ知らしむ 6:30
 情景4   ④6:43 ⑤4:03 ⑥3:25 ⑦8:13 ⑧2:42
 ⑨間奏曲 2:05

【CD11】 71:21

(30b)歌劇『モーゼとアロン』第2幕 D1〜D12

 ①情景1 アロンと70人の長老たち、啓示のくだるシナイ山の前にいる (3:18)
 ②情景2 モーゼはどこだ? (7:11)
 情景3   黄金の仔牛と祭壇
       ③1:01 ④3:21 ⑤2:10 ⑥3:24 ⑦4:44 ⑧5:34 
       ⑨2:56 ⑩5:17
 ⑪情景4 1:09

 ⑫情景5 モーゼとアロン/あなたは何をしたのです? 10:22

 

   ギュンター・ライヒ(Br/モーゼ)、リチャード・キャシリー(Te/アロン)、フェリシティ・パーマー(Sp/

   少女)、ジリアン・ナイト(Ms/病める女)、ジョン・ウィンフィールド(Te/若い男、裸の
   若者)、ジョン・ノーブル(Br/もう一人の男)、ローランド・ヘルマン(Br/エブライムの徒)、
   リチャード・アンガス(Bs/祭司)、その他
   BBCシンガーズ、オルフェウス少年合唱団、BBC交響楽団
   録音;1974年11-12月、ロンドン、ウェスト・ハム・セントラル・ミッション
       

(31) 室内交響曲第2番変ホ短調 op.38  D13〜D14

   ⑬Adagio 9:57 ⑭Con fuoco 10:59

   アンサンブル・アンテルコンタンポラン

   録音;1980年、パリ、ポンピドー・センター、Ircam
 
  全ての指揮;ピエール・ブーレーズ
  録音;1974~1986年
  Ⓟ&ⓒ 2013 Sony Music Entertainment/CD11枚組/現代音楽/中古

f:id:kikuy1113:20210912174216j:plainf:id:kikuy1113:20210912174238j:plain  

【CD10】 49:13 

(30a)歌劇『モーゼとアロン』第1幕

【CD11】 71:21 

(30b)歌劇『モーゼとアロン』第2幕

    <★★★★△>
現代音楽をいくらか聴いているワタシにしても難物だったようで、数年前にも
何度か聴いて、鑑賞記を書きブログにも載っけたはずだと思っていたのですが、
探しても見つからない。撃退されて、何も書かなかったみたい・・・ 思い出
せない。とすると、チャレンジせんとしゃーない・・・
 
始めはカンタータとして企画され、次にはオラトリオとして構想され、しまい
にオペラになっちゃった。
第3幕まで作る予定が、出来上がったのは第2幕まで。戦争やアメリカ行きな
どでいろいろと中断し、第3幕は出来ずじまい。最後まで未練たらたらだった
らしい。書かれたのは1930~32年ごろ。
 
旧約聖書の「出エジプト記」の第3,4、32章を下敷きにシェーンベルク自身
によって作られた。宗教的題材を基礎としながらも、シェーンベルクの解釈は
かなり個性的・・・ その理由の一つは、ナチスによるユダヤ人迫害というドイ
ツの政治的状況にある・・・ などとある。民衆を悲惨な状況から救うために
エジプトを出ることになる。その民衆がユダヤ人ということ? フーンという感
じ。アロンというのは本来はモーゼの兄で、コーランにも出てくる人物。諸説
あって、あまり明確な人物像は結ばない。
あらすじは以下のよう。

f:id:kikuy1113:20210912174506j:plainf:id:kikuy1113:20210912174537j:plainf:id:kikuy1113:20210912174554j:plain

これじゃいくらなんでも長い。しかも対訳はなし。
手に余ってそのまま貼り付けてしまった。まあ大雑把にはこんな感じか。
 
モーゼに対し、神からのお告げがあって、ユダヤの民をエジプトから救い出
せと言う。ついては兄のアロンの力も借りよというので、合流。海を割った
りなんかして、シナイに着く。(ユル・ブリンナーアン・バクスターも出
て来ません、ハハハ) 神によばれモーゼが山に入ると、これがいつまでた
っても戻らないので、アロンは神について民衆の疑念等を晴らすため、民衆
に迎合したものを提示するなどしてやり過ごす。ところが戻ったモーゼが持
ち帰った「十戎」も、アロンの考える神も、「イメージの問題であって、そ
んなに変われへんやないか・・・」  モーゼ自身も疑い、十戎の石盤は壊
してしまう。しかし、結局アロンは罪に問われてしまう・・・ この辺まで。
 
おしまいのモーゼの疑惑なんざ、説教ネタの最たるもののはずで、シェーン
ベルクもテキスト化は難しかったろうと思う。
最後は、長生きのモーゼも早死にのアロンもくたびれもうけみたいだが、オ
ペラとしては完成されないままに終った。アロンは死に、モーゼは確か、民
と砂漠をさまよい、約束の地を見つけはするが、神には受け入れられない。
オペラは、モーゼや民衆をどうなったことにするつもりだったんだろう。
そして、その後たくさんの預言者が現れ、旧約には多くの記述に残されてい
るが、キリストが現れるまでは遠いこと遠いこと・・・
 
音楽はシナイ山の顛末あたりまでしかない。かの大作映画では大盛り上がり
になる多神教偶像崇拝に引き戻されていくあたりは、このへんかぁ・・・
なんて一応感じながら聴くわけです。ま、ドラマとしてはその程度にしか感
じないままなんで、あまり真面目な聴き方じゃない。いつも通り。音(≒音
響)を楽しむだけに近かったですね。
独唱ではシュプレヒシュティメが少しだけ出てくるものの、『月に憑かれた
ピエロ』のような居心地の悪さはまったくなかった。
合唱(民衆?)の扱いが、この言い方では語弊もあると思うが、まるでベー
トーヴェンのような楽器的な扱いに聞こえ、これは大変ラッキー!
リゲッティのような音楽に繋がっていきそうな気配も感じました。
そして随所で聴けるオケの奥深い響き。味覚で言うなら「舌鼓」とでもいう
ところです。
 
例えばCD11の⑤や⑧や⑩などは歌が全然なかったり、少しだけだったりする。
こういうところのサウンドは、まさに最高。
音だけ聴くには、いささか長い。でもねぇ、マーラーブルックナーの交響
曲を聴くことを思えば、形式や枠組みはないものの、そんなに違いやしない。
だからというべきか、これは、観ても面白いオペラだとは思えない。
『十戎』じゃあ、映画的な見せ物がいろいろあったけど、、、このオペラを
見せるのは至難の業じゃないか。知りませんけどね、工夫もするだろうし。
結論、これは「聴くオペラ」なんだぜ!
録音の良さもあって、陶然とさせてくれる約100分でした。
 
ぶり返した暑さの中で、もたもたと聴き、ダラダラ書ときました。
前回聴いた時にはなにも書かなかったようなんで、まあ、やっと義理、じゃ
ない、義務を果たしたような感じです。勿論リヴェンジじゃない。

f:id:kikuy1113:20210912175128j:plain

       (これはオリジナルのときのジャケット)

 

(31) 室内交響曲第2番変ホ短調 op.38 D13〜D14 

 <★★★★△>

これって、ひょっとすると、シェーンベルクの大傑作なんじゃないですかね。
第1番とはもちろんえらい違い。
ワタシの妄想的な考えですが、『月に憑かれたピエロ』や『グレの歌』あた
りで停まってしまっていたら、シェーンベルクは大作曲家としては残らなか
ったでしょう。作曲期間は1906~1940年。長く弄り倒したのに、ちゃんと出
来ちゃった。『ヤコブの梯子』や『モーゼとアロン』も傑作だけれど、この
交響曲の規模のまとまり具合と、何より音楽的な完成度、訴えかけるものの
強さは、比類がない。無調や12音で、こんなに引き込まれる音楽に到達し
たことが、すごいと思います・・・
でも、これ違うな。無調やもちろんセリーなんかじゃないよ。
第一部というのか第一楽章というのか、は、涼やかにしめやかに始まるんだ
が、サウンドは「室内」とは思えないほど、どんどん厚みを増し、これは譬
えは変だけど、プロコフィエフの第5交響曲の第1楽章のある楽想をブラー
ムスっぽくやってみたら、なんていう感じ。第二部は、引っ括ればスケルツ
ォ楽章。『モーゼとアロン』の凄味みたいなものはないが、暗くても楽想豊
かで、長い期間かけたのが吉と出たんですねぇ。
 
もっともっと普通にプログラムに載らないとイケナイ! 解説したものには、
そこまでは書いてないんで、ま、あくまでワタシの好みや思い込みなんです
けどね。いい曲で、セットものの最後が締まりました。
 
そうそう、おかしな妄想。ブラームスの名を出したからこそのこと。ブーレ
ーズにブラームスの録音なんてあるんだろうか。ないんじゃない? 知らな
いけど。それに、もし管弦楽の録音が残されていたとしても、それ、聴きた
くないワ。ハハ。

f:id:kikuy1113:20210912175032j:plain

f:id:kikuy1113:20210912175043j:plain

5月末ごろからですからね、やっと終わったと言うべきでしょう。
セット物は、10枚も超えちまうとシンドイ。ちょっと鬱陶しいですね。
夜、パソコンの前に座ると、思い出してしまうことが多かった。ああ、あの

鑑賞記書けてないなぁって。

でも、この最後の2枚は長く車の中にあって、誰にもわかってもらいたい至

福の音楽体験でした。『モーゼとアロン』については、吉田秀和が絶賛した

なんて、はじめは信じちゃいませんでした。こういうこともなくちゃね。

もっとも、前回聴いた時、なぜ感想文を書いてなかったのか、理由はわから

なかった。まとまらんかったんやろうが、今とそんなに違ってたのかねぇ。

 

久々のゴルフ

雨と雷にやられたゴルフでした

もう一週間たつんですねぇ

まだ昨日のことのようです

いまごろアップするのもナンですが・・・

土砂降りの中のゴルフは大嫌い!

でもゴルフは大好きです

(9/5)
一昨日は、ゴルフ。年2回やっている中学校の同窓会のゴルフ。
ゴルフは今はこのコンペへの参加のみ。けっこう楽しみにしてます。行く前に3
度か4度練習に行って、100球づつぐらい打ちます。
中年ぐらいまでは、まだ上手になりたいという欲があったのですが、今はもうあ
りませんね。ちゃんと習っておけば、基本的なチェックポイントなんかが身につ
いたのでしょうが、それもない。とりあえず空振りせずに前に飛ばすことだけ。
毎回100前後でなんとか上ってはこれるのですが、何が悪いって、一番はパタ
ーですね。いつもスタート前に練習グリーンでいくらか試すだけ。
感触をなんとか掴もうとしますが、それよりなにより、どうも目がおかしい。傾

斜を間違ってしまっていることが多いのです。3パットの回数がどんどん増えて

きた。根本的な問題があるんでしょう。

 
さて今回は新興宗教の敷地内にあるわりといいコース。
8月の半ば過ぎに予定されました。ところが8月半ばから、異例の雨続き。日本
中あちこちで被害も出る有様で、こりゃダメだろうと幹事たちが延期を決めた。
で、9月3日へ。8月の延期は大正解で、よしよしと思ってましたね。
 
ところが、なんのことはない、この前日あたりから再びくずれだした。
小降りと大降りを繰り返し、昼食後は雷までなり始めた。そして退避せよのサイ
レン。運悪いねぇ。土砂降りのゴルフほど嫌いなものは、そうはない。
クラブハウスに全員戻り、終ったハーフ分だけをネタに暫定の表彰をし、皆ほと

んど会話らしい会話もせず、そそくさ解散。コロナのせいで風呂なし、打ち上げ

なし。

実はこの後、雷は鳴らず、雨もあがってしまった。もうちょっとだけ(30分ぐ
らい)待っておれば、ちゃんと終われたのにねぇ、、、結果論やけど、、、お金
だけでなく損したみたいな感じ。
 
ハーフだけでも順位は順位で、ワタシャブービー。まあ普通のスコアではあった
のですが、ダブルペリアの隠しホールが逆に嵌ってしまったらしい。
優勝とブービーが次回の幹事という決まりなので、仕方がない。来年の春やね。
 
トップだった方に送ったSMS・・・
 3日はさっさと帰ってしまってゴメンナサイ。次回をいつにするかはともかく、
 近づいたら連絡ください。何ができるわけでもないですが、手伝います。
 結果論ながら、もう少し待てば終えられましたね、残念。クラブや靴がまだ乾
 きません・・・
 
そういや、今回の前に練習に行こうとしてびっくり。クラブのバッグが黴だらけ。
多分長雨のせいでしょうな。
カビ取り剤も加えて拭くのに、だいぶん時間を採られたんでした・・・

そして今回はびしょびしょ。

 

道具、カッパ、靴など、手入れして全て干したあと、傘なしで、犬ころの散歩に

すぐ行きました。

f:id:kikuy1113:20210910003114j:plain

  雨で写真を撮るような状況ではありませんでしたが、帰ってから一枚

  撮っていました。「賞品」。

  カラーボールですね。あまり好きではありません。ブービー賞もめで

  たくない!

  (みなさん、また来年・・・)

 

ついでに

〇9/7

f:id:kikuy1113:20210910004832j:plain

いつも行くスーパーの端っこのテナント店で見つけた。

フェルメールの絵がこんなふうにアレンジされるもんなんやね。

「ベェー!」してるで。

 

〇9/6

f:id:kikuy1113:20210910005126j:plain

これは名古屋から届いたCDの盤とジャケット。

長男夫婦がヴァイオリン2本とアレンジなどで加わって、中国の方々と

最近作ったアルバム。この赤色、いかにも。

なんの50周年だかよくわからんが、中国のいろんな音楽が入っている。

西洋音楽かぶれには感想文書きにくい。

 

 

映画『ランボー ラスト・ブラッド』

20210831(了)

映画『ランボー ラスト・ブラッド

  エイドリアン・グランバーグ監督//シルヴェスター・スタローン/
  イベット・モンレアル/パス・ヴェガ/セルヒオ・ペリス=メンチェータ
  音楽:ブライアン・タイラー
  2019年製作/101分/米映/原題:Rambo: Last Blood/レンタルDVD
  <★★☆>

f:id:kikuy1113:20210907235045j:plain

これは観る予定にはなかったんですが・・・
 
アリゾナの荒野の牧場で、ずっといてくれた家政婦さんとその孫娘ガブリエ
ラの3人で暮らしていたジョン・ランボー。ガブリエラが大学に行きたいと
言い出した時、同時に父に会いたいという希望も漏らす。母娘を捨てたクズ
男だから止めておけとランボーは反対するが、決心していたようで、彼女は
こっそりメキシコに行く。その通りの父親だとわかるのだが、帰る前に気晴
らしに行った店で、彼女は人身売買のヤクザグループに拉致され、ひどい目
に遭ってしまう。肉親同様に思っているランボーが動かないはずはない・・・
それ以上は書かないほうがいいでしょう。
 
もはやジジイの域に入っているものの、ランボーの復讐はすさまじいもので、
武器や仕掛けは全てアナログだが、敵が来る前には、ぎりぎり準備し終えて
いる。そんなに時間あったっけか。まあいい。
そのアナログぶりがかえって凄惨な殺戮になる感じ。はじめのころの頭脳や
イデアやすばしっこさとはけっこう違って、さすがに年の功というか、戦
闘マシンとは言えないが、まあ、よく言えば落ち着いている。動作は鈍くて

も人の動きをよく読んでいる・・・(当然の設定です)。

年はとってもベトナムで見捨てられた悲しみや様々な悪夢にさいなまれてい
ることはわかった。だけど、ここでのランボーの怒りの根っこは、明らかに
そうしたものとは質が違ってしまっているのですね。
 
ところで、1作目と2作目はなんとなく覚えてますが、3作目と4作目は観
ていないかもしれないな。どっちかは観たのかなあ。
一つはアフガンの名が入っていたような気もする。アフガンにも行かされ、
孤独な殺戮をやったんや。
今のアフガンはというと、米軍や他の国の軍も撤退。残る民間人は不安いっ
ぱい。日本人も大勢が取り残されて、なんとかしてやれ!と杉原千畝を引き
合いに出したりしてマスコミは掻き立てている。
国づくりが見えないことも、女性問題も確かに心配。
で、米軍は20年間の「戦い」から撤退完了したというが、こんな状況でラン
ボーが置いてきぼりを喰らったりしたら、大活躍できるシチュエーションが
考えられそうじゃないか・・・ なんてね。
 
戻って、相手はかつて「戦闘マシン」と言われた男のことなんかつゆほど
も知らないヤクザ連中が相手で、ちょうどいい。よく考えられていると思う。
舞台はメキシコをきっかけにするも、大半がアメリカ国内の、それも牧場の
中だけが戦場になる。
ランボーはトラウマを心行くまで引きずり、味わいつくすかのよう。
幕引きとしてはこれでよかったんじゃないかな。どうでしょう。
 
エンドタイトルでは、はじめのころのランボーがちらちら出て来まして、若
っかー!懐かしいですよ。
ベトナムも遠くなった。珍しく共産主義系の国として発展(経済発展)して
いる・・・
 
最後は音楽。ブライアン・タイラー。ああなるほどなぁという、ジマー系の
音楽。この方は多くの作品を担当してきた手練れだとは思います。でも言っ
ちゃ悪いが、ウルサイ無機的な打ち込みが続くばかり。確かにメロディの中
には、古いファンにも気付いてもらえる程度にジェリー・ゴールドスミス
当初のテーマがアレンジされて入っているものの、気持ちがこもっていない
というか(スミマセン、でもワタシは批評家じゃない、ただ楽しみたいだけ
なので)、魅力的には響いてくれませんでした。

 

タンスマン: 交響曲 第5番 他

20210815(了)

タンスマン: 交響曲 第5番 他

 Alexandre TANSMAN(1897-1986): Sym.5
(1)交響曲 第5番(1942)
   ①7:48 ②5:59 ③5:31 ④9:15
(2)イーゴリ・ストラヴィンスキー 追憶の石碑(1972)
   ⑤5:59 ⑥5:05 ⑦5:19
(3)四つの交響的断章(1956)
   ⑧5:46 ⑨3:34 ⑩1:23 ⑪6:05 ⑫7:53
 
   メイア・ミンスキー指揮
   スロヴァキア国立コシツェ・フィルハーモニー管弦楽団
   録音;1991年/コシツェ Tot.69:37
   1992年/CD/管弦楽曲/Marco Polo/輸入/中古
   <★★★★>

f:id:kikuy1113:20210904233634j:plain

フランス人になりたかったユダヤポーランド人、タンスマン・・・
というイメージがピンとくるのは(1)の交響曲第5番。
これは、なんたって、ダリウス・ミヨー交響曲を彷彿するというか、音色
がものすごく似ている。特に前半。そして後半は、やはり大好きなケクラン
との類似を聴きつけ、まあ、聴きたいものを聴きつける勝手極まりないこと
ではあるのですが、嬉しかった。
このあまり「高温」にならない音の感覚は、独特としか言いようがない。
交響曲は、哲学的なものだとか精神的な高揚といったものに繋げる音楽形式
と考えられがちだけれど、決してそうしたものにこだわる必要なんかないん
んだと思わせてくれる。
と、それはミヨーとの類似を聴きつけた影響と言えなくもない。
でも、実際は後半では、どこか社会的なものだとか歴史的なものだとかの反
映かもしれないと思わせるニュアンスもありました。
もちろん、生年では少し前のシマノフスキ(ワタシは大好きです)の国民性、
自然などを生かした厳しさ、この後活躍するペンデレツキや、ルトスワフス
キのような、重苦しくも暑苦しい音楽による社会的な暗いお喋りのようなも
のとはまるで比較にならない。まるで方向性の違う上品さやセンスや暗くな
らない美しさがもとより本質であって、やや無理した社会性なんかは、云わ
ばご愛敬といってもいいんじゃないか。
第4楽章を静かに聴き終えて、そう思いました。
 
(2)はて・・・どこかにストラヴィンスキー(1882-1971)いるの?
多分そういう聴き方しなくていいんだろうな。
基本的に両者の音楽はまるっきり違う。まあ一方は「巨人」ですし。

「巨人」の石碑を前にして覚えた感覚や言葉を音にしたというぐらいの交響

詩。

⑤は極めて抒情的で美しい。⑥は「春の祭典」よろしく目いっぱいバーバリ
ズムを盛り込んでみたけれど、タンスマンの技法じゃ、しょせんそれっぽい
ものができるはずもない、似ても似つかないものになっちゃったなぁ、とい
う感じ。⑦では一転、ひっそりと石碑の前で昔を思い出す感じ。接点はあっ
たんでしょうね。この⑦に、めったにないストラヴィンスキーの叙情が聞こ
えた気がしました。
 
(3) 四つの断章といつつ、1分23秒の短い 、つまり間奏曲がまん中に挟
まっている。意味なく並べたわけではなく、やはり通して聴いてくれという
意味なんだろう。始めの印象は音色かな。キラキラとして涼しげなこと。ラ
メの感じでは勿論なく、星々のきらめきや奥行き感。常動的な⑨でもその印
象は続く。ひっそりとやや不気味な ⑩Interlude は宇宙っぽいなかなかカッコ
のいいサウンド
その続きの⑪は人間界に戻って、孤独な精神状態にいろんな思いが割り込ん
んでくる感じ。
⑫この音色にはすごく既視感(ああ既聴感か)がある。なんだっけ。やっぱ
りミヨーかなぁ。思い出さないや。盛り上がる中間部は美しさを犠牲にして
精一杯凄んでみせ、おしまいはケクランの「ジャングル・ブック」の森に消
えて行く感じか・・・
 
ポーランドというイメージをまるっきり感じさせない音楽は、もちろんショ
パンやモシュコフスキーのようなロマン派の音楽とも違って、始めに書いた
ように、フランス人になりたかった、パリにいたかった音楽家なんでしょう
ね。時代遅れでビッグネームになるには要件がいろいろ足りないと思うけれ
ど、あまり知られないままというのはいかにも勿体ない。

ワタシには時々聴きたい作曲家なんで、結構好きな方はそこそこいるんじゃ

ないか。

 
ところでこのCD、オケのアンサンブルはさほど上質じゃないし、録音もや
や不自然な残響だと思うんだけれど、曲を損なうところまではなんとか行っ
ちゃいないので、良しとしますが、もう少しナチュラルな録音だったら、魅
力はさらに増したろう。ちょっと残念。
 
せっかく涼し気な曲たちだったのですが、なにせ暑い時に聴いていまして…
メモを取るのにだいぶん時間がかかってしまいました。真夏にも拘らず、秋
雨前線のような停滞前線が日本に居座り、雨続きになったため気温が下がり、
やっとしたためられたというわけです。
音楽で凉をとるなんてことは、言葉では言えるが、実際はそうもいかないも
のです。もちろん分かってはいますがね。

f:id:kikuy1113:20210904233904j:plain

 

「季が違うが仕方がない・・・」なんてね。冗談。
ともあれ、前途洋々、これからも楽しめる作曲家!