休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

TRACING  ASTOR

20201005(了)

トレーシング・アストル ― ピアソラへのオマージュ3

   Gidon Kremer plays Astor Piazzolla
  ①~⑬
  ギドン・クレーメル(vln.&arr.)/クレメラータ・バルティカ&ソリスト
   Ula Ulijona(ヴィオラ)、Marta Sudraba(チェロ)、Sol Gabetta(チェロ)、
   Leonid Desyatnikov(ピアノ&arr.)、Horacio Ferrer(voice)
  録音:1996年12月~2001年2月 ニューヨーク
  CD/室内楽~タンゴ/Ⓟ&ⓒ 2001Nonesuch Records/WMJ/邦/中古
  <★★★☆>

 

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《アマゾン惹句》繊細で美しい音色、息詰まる緊張感、あふれる情感。現代を代
表するバイオリニスト、ギドン・クレーメルの奏でるピアソラは限りなく美
しく、せつない。思い起こせば今日のピアソラ・ブームの火付け役となった
のが、クレーメルが1996年に発表したアルバム『ピアソラへのオマージュ』
だった。パリで見たピアソラとミルヴァとのステージに触発されて以来、そ
の音楽に魅せられてしまったクレーメル
   その第3弾となる本作では、『天使のミロンガ』に続き、クレーメルが主宰
するバルト3国出身の若手演奏家を集めて結成されたクレメラータ・バルテ
ィカとの共演。おしゃれでアヴァンギャルドクレーメルピアソラを聴か
せてくれる。
   タンゴの革命家への一途な愛と尊敬が伝わってくる、熱くスタイリッシュ

な1枚。

 

 
これまでの2枚と違うのは、クレーメルのヴァイオリン1本だけの演奏の比
率が高いことでしょう。特に前半。
惹句の文言もわかる。
だからというべきか、人気/評価は分かれている。
 
今回は特にだらだら書く気にはなりませんでしたが、気にいらなかったわけ
ではありません。
ワタシはソロよりアンサンブルのほうが断然好きなので、後半は安心して聴
くことができましたし、前半に多かったクレーメルのソロは、テンションの
高さのみならず、そのアヴァンギャルドぶりが強烈で、耳をそばだたせられ
っぱなし。逆に熱狂してしまった人がいたのも納得です。
 
クレーメルの他のNONESUCHへの録音、みんな聴いてみたいですね。
ちょっとね、緊張を強いられるようなところがあるんだけど・・・

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漫画「記憶の技法」吉野朔美

20201008(了)

記憶の技法/吉野朔美

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(1)記憶の技法
    TAKE:1~5
(2)霜柱の森
(3)アンナ・O
(4)女子高校生殺人日記
(5)粉ミルク
(6)透明人間の失踪
(7)恋愛家族
 essay 東 直子
  2006年9月/漫画/文庫/小学館/中古
  <★★★☆>

 

〈通販解説〉 華蓮(かれん)は、偶然見た自分の戸籍抄本に不可思議な記載
をみつけた。亡き年下の姉の存在。記録から消された実父母の氏名。自ら
の過去に疑問を抱いた華蓮は、隠された真実と封印された記憶を取り戻す
ため、旅にでる――。
 
 
上記は(1)の解説に当たる。
珍しく漫画読みました。久々です。どういうことでリストアップしていた
か忘れてしまいました。この方映画好きで、書かれた文章が面白くて、そ
の関連だったかな、、、
 
(2)以下の作品も面白いんだけれど、本の五分の二ほどを占める(1)の
印象がどうしても強かったので、感想文はこれだけにします。
 
解説には一言も触れられていないんですが、かなり世間知らずで、いたっ
て明るい華蓮を、ほとんど徹底的にサポートするという奇妙な存在の男の
子がいるのです。漫画に色はないんですが髪がまるで金髪。(これは染め
ているんだな) そして何より目が青っぽい。欧州系でもなんでもなく、
偶然そう生まれついた日本人。同じ高校生、同クラスなんだが、大人っぽ
さが目立つ。おせっかいな彼の境遇もオイオイわかっては来るんですが、
何はともあれ、彼女の遠出。親しかったわけでもないこの男子を連れての
もの。じゃない、逆に連れられてと言ってもいい、ほとんど珍道中。また
多分「珍」が付かなきゃ、シチュエーションとしては、あまりに嘘っぽい
というか、不自然。
彼女は親には韓国への修学旅行のままにし、学校にはお祖母さんの見舞い
だと、両方に嘘をついて、九州へ出自探しに行く。
 
彼は美男だし、彼女も美女っぽい。それだけだと、ワタシなんかこんな絵
のマンガはストーリーや中身がなんぼ面白くても絶対イヤなんだが、そう
思わせなかったのは、彼女は正面を向いているとそういうカワイコちゃん
なのに、たとえば、横顔を見せている時の多くは、尖った小さな鼻、そし
て鼻の下が長く、口の表情がたいてい鼻じらんでいたり、あきれていたり、
怒っていたり、といった、いわばカッコのよくない顔つきをしていて、完
全に三枚目。そういう描き方がとってつけたものでなく、自然だったから。
ま、「珍」の続きということになるのかもしれない。
それだけでもないんですけどね。
 
ところで、タイトルの「記憶」。
封じ込められた記憶がどうのこうのというふうに扱われているだろうこと
は始めからわかっているわけですが、彼女の時々飛びがちな記憶とは別物
で、これが彼女の出自探しの本来の理由。
出自はわかります。ほとんど「猟奇」ふうな事件がわかってくる。その描
写、ダークにならずにさらっと、でもとてもインパクトたっぷりになされ

ていて、うまいと思いました。それに、彼女も暗くならない。映画的とい

うのでもない。

で、彼のことは・・・それはまあおまけみたいな感じ、かな。
 
その他の短編の中には、上記の「彼」のスピンオフも含まれています。
 
女性漫画家のものをちゃんと読んだのは、ひょっとすると初めてかもしれ
ない。そうたくさん漫画を読んだ人間でもないのですが、女性の書く絵が

どうしてもだめだったですね。例外的だったのは「サザエさん」ぐらいで

しょうか。

 (高野文子とか岡崎京子も少し読んでました・・・忘れてました)

カール・シューリヒト 10枚組 3-3

20200930(了)

カール・シューリヒト/

 ザ・コンサートホール・レコーディングズ

      <3-3>

<Disc 7>
モーツァルト交響曲第38番、第40番、第41番(Paris Opera Orchestra)
  1963年&1964年9月/パリ 74:50
<Disc 8>
バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第1〜4番(Z'rich Baroque Ensemble)
  1966年5月/チューリッヒ 60:42
<Disc 9>
バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第5番・6番(Z'rich)
  1966年5月/チューリッヒ
ウェーバー:オベロン序曲、ニコライ:ウィンザーの陽気な女房たち(SWR )
  1962年9月/バーデン=バーデン  Tot.56:43
<Disc 10>
メンデルスゾーン真夏の夜の夢(Bavarian)、
  1960年/ミュンヒェン
フィンガルの洞窟(SDR)、美しきメルジーネの物語、リュイ・ブラス(SWR)
  1960年/シュトゥットゥガルト&1962年/バーデン=バーデン

 

CD/10枚組/クラシック/Ⓟ&ⓒ 2003 SilverOak Musuc/Scribendum/輸入中古
 
 *SDR; シュトゥットゥガルト放送交響楽団
 *SWR; 南西ドイツ放送交響楽団 バーデン=バーデン
   現在両者は統合され バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団
  *Bavarian; バイエルン放送交響楽団

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<Disc 7>
モーツァルト。オケはパリ・オペラ座管。ベートーヴェン交響曲全集は
パリ音楽院管。なんでパリなのかな。一度はベートーヴェン、一通り聴
いてみたかった気もします。
録音は「プラハ」が63年、40番と「ジュピター」が64年。音はやはり
あのほうがいいのだが、演奏は「プラハ」が断然いい。というか、テンポの

弄りも少しあるけれど、なにより気持ちの入り方違う。(いや、やはり嵌り

方かな)

実はもともと一緒に録音された36番「リンツ」の熱気がワタシ結構好きだ
ったのです。ちょっとバランスを崩しているところがあるからか、世評は
プラハ」には叶わないけれど、やっぱり「リンツ」も入れてほしかった。
この2曲に比べると、40番・41番は妙に落ち着いちゃってて、いわば
‘普通’の演奏。シューリヒトにしてはおとなし過ぎだね。それに40・41
はもともとあまり好きなほうじゃないのです。へそ曲がりかも。35・36・

38・39(シューリヒトに録音があるかどうかは知りません)なんかのほうがず

っと気に入ってます。35番は確かメジャー(ロンドン/DECCA)にウィー

ン・フィルとスタジオ録音してましたっけね。

 

<Disc 8>
超のつく有名曲ながら、一曲を除いて、聴きたいと思うことがついぞない
協奏曲集。
録音がこの中では最も新しいことと、流れのあるいい演奏であることで、
聴き映えがするとは思うのですが、特別な感興はありません。一曲を除い
てというのは4番で、編成も5番と同様、フルートが入って小さく、典雅
で小気味いいのが昔から好きなのです。これも普通にいい演奏だったと思
います。
 
<Disc 9>
5番6番も〈Disc8〉と同じ印象で、特に変わりません。
ここではウェーバーの2曲ということになりますね。うち、「オベロン」は
聴き馴染んで好きな曲ですが、「ウィンザーの陽気な女房たち」同様、流
れはあるので悪くはないですが、それ以上でもないというところでしょう
か。
 
<Disc 10>
真夏の夜の夢」もこんなセットものじゃなきゃまず聴くことはない音楽
なので、いくらか懐かしかったですね。聴いたこともあるはずの演奏。オ
ケもいいので、まあまあの演奏じゃないでしょうか。いい録音なら評価も
伴ったかもしれない。
「フィンガルの洞窟」は、もっとアンサンブルの整った演奏でよく聴いた
曲なもんだから、この演奏、録音では魅力薄。
「美しきメルジーネの物語」はタイトルすら忘れてしまっています。まあ
まあロマンティックな、メンデルスゾーンらしさのある曲。「ルイ・ブラ
ス」は曲名を知っているだけ。メルジーネと情況は似たようなもの。 
 
幾度かづつ聴き終わってみて、結局は世評通りになってしまったなぁとい
う感想です。
ブルックナーの7番、ヨハン・シュトラウス2世ブラームスの4番、モーツ
ァルトの38番・・・ プラスするなら、ワーグナーの1枚かなぁ。音さえ
もうちょっとだけ良ければ、シューマンの3番も本当は加えたい。

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映画『ヤコブへの手紙』

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20201001(了)
 映画『ヤコブへの手紙』
  監督:クラウス・ハロ//カーリナ・ハザード/ヘイッキ・ノウシアイネン
  2009年製作/76分/フィンランド/原題:Postia Pappi Jaakobille
  <★★★★>

 

終身刑だかで服役中の、やや太めの目つき鋭くドスの利いた女が、恩赦を
受けてシャバに出る。条件があって、行かされるのは、盲目の牧師の牧師
館。なんで恩赦で拘置所を出られたのかは、泣かせる話で、最後にならな
いとわからない。
恩赦を受けてもふてぶてしいこの女は、食事の世話なんかしないと、最初
っから宣言しておいて牧師館にとどまる。一度はトンズラしようともする。
一方牧師は、神が自分に何をさせようとしているのかけっこう懐疑的。で
もわけがあってこの女を自分のところに来させたとりあえずの理由は、教
徒など誰もいなくなっているんだが、送られてくる手紙に反応してあげる
のを続けること。彼が正気を保っておれるのはそのことがあるからかもし
れないと思わせる。体力も気力も限界に近い。
ともあれ、届く手紙を読んでもらい、返事を口述筆記し送るというような
ことを女にしてもらおうとしているらしい。前にもそういう人間がいたが、
いなくなっていた。
牧師館からポツンと湿地帯にある教会までは1キロかそこいらかな。2キ
ロはないだろう。海が近いようだった。この教会、遠目には小さく見える
ものの、中は案外広く見える。椅子などなんにもなくガラーンとしている
から余計に。これまで牧師は杖などを頼りに、一人でなんとか行き来でき

てはいた。どちらの建物の中も勝手はわかっている。

 

ぎこちない二人の関係は、さてどんなふうに進むのか。
彼ら以外には、郵便配達夫が出てくるだけ。彼も大事なキャラ。
女の冷たくきつい目つきは、おしまいのほうまでほとんど和らがない。ほ
とんど、なのであって、最後には少し変化するけどね。
 
複雑な話じゃありません。
ワタシは基本的にクリスチャンの話(広く宗教といってもいい)はノー・サ
ンキューなんですが、これは抵抗感は少な目で、わかりやすいいいお話でし
た。これ書くのは恥ずかしいのですが、まあ今更どうということもないでし

ょう、泣けてしまいました。冬になる前らしいフィンランドが地味に美しか

ったですね。

 
牧師館というと・・・もう今はオフクロを教会に送り迎えすることはほとん
どなくなっています。日本基督教団のこの地区の担当は40歳前後の若い牧
師で(ミステリー好きだということは知ってます)5人家族だったか。教会
にくっつくようにある牧師館が所帯持ちにはあまりに手狭。増築するか建て
直すか等々ずっと揉め続けてきていました。まあ、結局はお金の問題。オフ
クロはどっちにしろ教会員数が先細りなんだから無理だと、反対してました。
それが、このごろ解決したんだそうです。どうやらすぐ近くに空き物件が出、
家賃がリーズナブルだというので、そこを借りることにしたとか。思い出し
ました。
オフクロが死んだら、この牧師のお世話になります。

カール・シューリヒト 10枚組 3-2

カール・シューリヒト/

                   ザ・コンサートホール・レコーディングズ

                             〈3-2〉

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<Disc 3>
シューマン交響曲第3番「ライン」、マンフレッド序曲(SDR)
  1960年12月/シュトゥットゥガルト
ヨハン・シュトラウス2世:シャンペン・ポルカ、常動曲、ジプシー男爵序曲、
ウィーン気質、南国のバラ、酒・女・歌(Vienna State Opera Orchestra)
  1963年4月/ウィーン Tot.75:24
<Disc 4>
シューベルト交響曲第9番「グレイト」(SDR)
  1960年9月/シュトゥットゥガルト 51:24
<Disc 5>
ヘンデル:合奏協奏曲Op.3-4、Op.6-10、「アレキサンダーの饗宴」、Op.6-4
  (Bavarian)
  1961年9月/ミュンヒェン 52:07
<Disc 6>
ブラームス交響曲第4番、悲劇的序曲(Bavarian)、
  1961年9月/ミュンヒェン 69:01
ブラームスハイドンの主題による変奏曲(SWR)

 

CD/10枚組/クラシック/Ⓟ&ⓒ 2003 SilverOak Musuc/Scribendum/輸入中古
 
 *SDR; シュトゥットゥガルト放送交響楽団
 *SWR; 南西ドイツ放送交響楽団 バーデン=バーデン

   現在両者は統合され バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団

 *Bavarian; バイエルン放送交響楽団

 

<Disc 3>
シューマン/ラインの録音は初めて聴きました。はじめこそアンサンブル
がばらけた感じで、どうなるんだと心配させますが、どんどん調子づいて
行き、時々「オッ!」と思わせるシューリヒト独特の演出を織り込みつつ、
おしまいまでノリノリ。なんと音の寂しさもほとんど忘れるほどでした。
盤に切れ目を入れてもさほど変わらんかったけどね。録音よかったらとん
でもない名演だったんじゃないか・・・なんてね、こうなると昔の名演奏
に拘る‘好事家’と似てくるかもなぁ・・・
「マンフレッド序曲」も同じテンションが続き、素晴らしい。
それと、考えてみるとワタクシメは、シューマンの少なくとも交響曲をあ
まり熱心に聴いてこなかったなぁ、ってことも大事な感想のように思えて

きた。この演奏だからなのか、うれしい「要注意」なのか・・・

 

さて、それに比べシュトラウスⅡものは、録音はたった3年の差なんだけ
ど、音質が格段に良い。そしてこの演奏がチャーミングで素晴らしい!
やっぱりウィーン・フィル関連だからなのか、ウィーン国立歌劇場管弦楽
団はリハーサルなんてろくにやらなくったっても、楽団員全員があのリズ
ム感や楽しさが体に染みついているんだろうね。あとは四の五の言わなく
ったって、ちゃんと演奏できちゃう。元のアルバムから2曲がカットされ
ているそうで、確かにこの盤の収録時間はいっぱいいっぱいだけれど、惜
しい・・・ 上品でさらっとして粋な感じの、かのクレメンス・クラウス
に負けてない(!)、しかもどこか独特な気がしました。
 
<Disc 4>
シューベルトの「グレート」。メンデルスゾーンが天国的長さ、と言った
と伝わっていますが、やっぱり長い。LPでですが、高校時代かなり聴き、
メンデルスゾーンの言い草もそこで読んだと思います。
第一楽章の途中からテンポが上がって、終わりまでずっと熱量が高い。長
い!という印象は変わらないです。
それにつけても、この楽章のエンディングについては、このバタバタがス
ピーディに終わる形が普通だと、長い間思ってまして、他の演奏と全く違
っているとわかるまでけっこうかかった。シューリヒトはこういう箇所が
いろいろあるヒトなのです。
大人になってからはシューベルト交響曲はまるで聴かなくなってしまい
ました。この曲も「未完成」なんかも例外じゃない。嫌いというんでもな
いんですが、ウーン、退屈ってことですかねぇ。
もっとも、音はスッキリしません。というか、シュトゥトゥガルト放送響
との録音は概してアカンね。が、長いとはいえ、シューリヒトの音楽自体

は、テキパキして好ましいと思いました。もっとも、もう聴く機会がある

かどうか。

 
<Disc 5>
ヘンデルの合奏協奏曲集。
残念ながら、これはワタシが聴きたい音楽ではありません。
演奏も録音もしっかりしたもののようだとは思いました。
 
<Disc 6>
このブラームスの4番も昔はLP。今はCDで持っていますが、今回のほう
が明らかに音質が向上しています。昔のLPもここまではよくなかったと
思う。
フワーっと妙に軽い入りだったのが、どんどん気持ちが入ってくるのが独
特。それが最後までダレない。評価は、熱狂的な批評家がいたこともあっ
て、もともと高かったのですが、こんなに熱かったっけ。
このセットものに入っていない3番が、オケも音も粗かったんだけれど、
実はちょっとした弄り(例えば第3楽章)がイカシテまして、ワタシのお
気に入りでした。ここまで音質向上するのなら(いやいや、そうでなくっ

てもなんですが)、バッハかヘンデルの代わりに、入っててほしかったよ

・・・

「悲劇的序曲」もおおむね同じようなことが言えそう。「ハイドン・ヴァ
リエーション」のほうは、もとは3番とのカップリングで、これはオケの
表示は間違い。南西ドイツ放送響だった。でも、3番の高ぶる気持なんか
は入っておらず(まあそんな曲じゃないですけどね)、わりときれいな
(≒平凡な)演奏で、音もさほど悪くありませんでした。

 

 

新聞に連載された小説「火の鳥」

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20200928(了)

小説『火の鳥 大地編』 1~70 
  (作)桜庭一樹 (画)黒田征太郎 (原作)手塚治虫
   朝日新聞/土曜日連載/2019・4~2020・9・26連載完

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日露戦争から説き起こされ、1930年に入ってからのきな臭い世情、終戦
までを、火の鳥(つまり不死鳥)の血、あるいは首でもって、合計、確か17
回だったかな、時間を行きつ戻りつしながら進んでいく物語。創造された特
異なキャラクターたち(中にはレギュラーの猿田彦お茶の水博士の顔をし
た猿田博士)みならず、戦争に絡んだ歴史上の超有名人何人もが欲ややむに
やまれぬ思いなどを絡めて、歴史のやり直し、改変を繰り返してしまう。タ
クラマカン砂漠だとか楼蘭だかとか、中国のさまざまな都市や満州なんかを
幾度となく行き来する。

 

70回ですか。単純に掛け算しても490日。よく読めたもんです。
だいぶ、ええ加減な読み方をしてきましたけど、とりあえず読んじゃいまし
た。一応毎土曜日の習慣になっていました。
ええ加減というのは、自分で作ったブランチを食べつつ、テレビ(今ならM
LBの中継など)を観つつ、新聞を読みつつだったから。しかもこの連載の後
半には、金曜日にですが、「ガリバー旅行記」の新訳の連載が始まり、やめ
ときゃいいのに、つい読み始めてしまった。理由というのはヘンですが、と
にかく疲れ始めちゃった。どっちかを職場に持って行くなんてことが度重な
ってしまいましてね。疲れたなあと思い始めていたものですから、驚くやら、
ほっとするやら。なんだか急転直下の終わり方でした。
 
でも、桜庭一樹さん、スゴイ想像力。
原作と書かれている手塚治虫の書き残した記述は、せいぜい原稿用紙3枚足
らずだったというんだもの。

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        (これは最終回のすみっこに載ったもの)

 

翌日27日には、作者と画家、そして手塚眞氏にインタヴューしたものを、
同じく1ページを費やして載せている。それは、、、これも職場で読むこ
とになりそう・・・

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火の鳥」はワタシは大学生のころからの付き合いでして、COMなんて
いうマンガ雑誌で知って、その後は時々単行本で読むというようなことを、
他の作品ともどもポツリポツリとやってきました。読んだものは大体残し

ています。かなりの量です。孫にでもあげますかね。本の装丁がもたない

か。

でも、さすがにこの20年ぐらいは離れていました。それが去年小説とし
て連載が始まりまして、つい・・・
新聞のそのページを四つ折りしたものを70枚。けっこうぶ厚くなりました。
ぐっと押さえても厚みが5cmぐらいあったんじゃないか。これ、どうする
かな。
 
 



 

カール・シューリヒト 10枚組 3-1

カール・シューリヒト/

       ザ・コンサートホール・レコーディングズ

          〈3-1〉

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<Disc 1>
ブルックナー交響曲第7番(Hague Philharmonic Orchestra)
1964年9月/オランダ/ハーグ 60:26
<Disc 2>
ワーグナー:リエンツィ序曲、ジークフリート牧歌、ローエングリン第1幕への
前奏曲ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕への前奏曲(Bavarian 
Radio Symphony Orchestra)
  1961年9月/ミュンヒェン 53:12

 

CD/10枚組/クラシック/Ⓟ&ⓒ 2003 SilverOak Musuc/Scribendum/輸入中古

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Amazonに書きつけられたある方のコメント)
ドイツの名指揮者、カール・シューリヒトがコンサート・ホール・ソサエティ
に残した録音を集めたCD集。
かつてDENONから15枚くらい出されていたのだが、それを全部復刻している
わけではない。
権利の関係が絡んでいるのか、バッハの管弦楽組曲第2〜3番、モーツァルト
リンツ交響曲ブラームス交響曲第3番、ウェーバーのオイリュアンテ
序曲、ヨハン・シュトラウス2世のトリッチ・トラッチ・ポルカと宝のワルツ
が欠けている。
さらに不誠実なことに、メンデルスゾーン真夏の夜の夢ブラームスの交響
曲第4番、悲劇的序曲のオーケストラがバイエルン放送交響楽団とのセッショ
ンのはずなのに、南西ドイツ放送交響楽団にされている。
さらに、メンデルスゾーンのフィンガルの洞窟もシュトゥットガルト放送交響
楽団との録音なのに南西ドイツ放送交響楽団になっている。
コンサート・ホール・ソサエティの音源自体が、かなりザックバランな録り方
をしていたのか、バッハのブランデンブルク協奏曲の第5番第3楽章の冒頭の
音が欠落しているなど、少々「やんちゃ」な商品である。

 

 

さて、真面目に鑑賞記。といっても普段あまり聴くことがない「クラシック」。
・・・
上掲文はうれしくなるようなもんじゃなく、後ろ向きで、この方、シューリヒ

トが好きかどうかわからない・・・でもきっとファンなんだろうな、ワタシよ

りは。

 
ワタシは、レコードを買い求め始めたころは、圧倒的に安いコンサート・ホ
ール・ソサエティという通販が多かった。その中に何枚かシューリヒト指揮
のものがありました。この指揮者で初めて聴く曲もあったはず。もう今はL
Pはほとんどないのですけどね。とにかく印象深いのです、この方。オケと
たいして練習もせずにコンサートや録音を行ったこと、概して相当テンポが
(時には極端に)速かったこと、しかし時に独特のテンポの動かしや表現を
採って、これが嵌ると、えもいわれぬ愉悦を味わうことができること・・・
レコードはなくなったし、その後たくさんの演奏を聴くうちに、ああこんな
変わった演奏でなくてもいいんだと思うようになっていったのですが、なぜ
か時にふっと思い出すことがあって、CDを買い求めました。ウィーン・フィ
ルなどを指揮してのメジャーレーベルへの録音は、そんなにヘンじゃない。
ブルックナーシューベルト
やっぱり聴いてみたいのは、アンサンブルなんか揃ってないけど、猛スピー
ドでとばしたり、独特のアゴーギグにアッと思わせられるもの。
で、もうそんなのは卒業しようかな、でも最後にゾロっと聴き溜めしようか
な、なんて思って、この安いセットものを手に入れてみました。

これでサヨナラ できるか、な?

でも、そんなにヘンテコリンな演奏じゃなかった。

 
そんなことで、半分ぐらいは聴いたもの、残りには聴きたいと思わないもの
がある。なので、細かい記述はしないつもりでしたが、10枚分のメモはそれ
でもさすがに長いので、三分割・・・
 
<Disc 1>
このブルックナーの7番はLPの時から何度も何度も聴いてきました。オケに
も録音にも不満が大ありでした。でも、演奏自体はなかなかのものだと思っ
てます。ウィーン・フィルとの8番や9番(EMI)にも負けない。
CDはこれが3枚目。そしてこの音が最もいいみたい。LPが最もよかったよ
うに思うが、もう覚えていないと言うべきでしょう。金のかかっていない
ヘタクソな録音であることは確かなんだけどね。こんな音なのに、不思議
な魅力があるのです。それがシューリヒト。
 
<Disc 2>
「リエンツィ序曲」と「ジークフリート牧歌」はやや速め。リエンツィのほ
うは、ヘンですが、どこかメンデルスゾーンでも聴くみたいな感触がありま

した。ワタシはこのリエンツィ、気に入りました。昔は好きではなかったの

です。

一方、「ローエングリン」と「マイスタージンガー」(これはなんだか繋ぎ
変えて ― つまり編曲している?)のほうはテンポは速いどころか、逆にと
ても悠然とした感じでしたね。シューリヒトさん、こんなのもあるんだ。
録音は10枚ではいいほうで、盤のレーベル面にカッターナイフで4本ほど
切り傷を入れたら、なお響きが豊かになりました。
演奏はさすがバイエルン放送響。ゲネプロの前、いきなりに近いみたいなの
に、さすがワーグナーゆかりの地のオケ・・・なんてね。胡麻をすっている
わけじゃなく、結構真面目です。
シューリヒトらしかったのは「リエンツィ」かもしれないが、〈METライ
ブ・ビューイング〉のテーマ音楽で使われているために、結果耳についてい
る「ローエングリン」がなんだかいままでと違って聞こえたこと、「マイス
タージンガー」が実に堂々としていて、シューリヒトらしくない(ゴメンナサイ、

奇妙な言い方です)ものの、音楽が充実していたこと、などで、この盤は意

外な儲けものになった気がします。