休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『荒野にて』

20200309(了)
映画『荒野にて』

  監督;アンドリュー・ヘイ//チャーリー・プラマー/スティーヴ・ブシェ
    ーミ/クロエ・ゼビニー/トラヴィス・フィメル/スティーヴ・ザーン
  2017年製作/122分/イギリス/原題:Lean on Pete/DVDレンタル
  <★★★☆>

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〈映画.com解説から〉 幼いころに母親が家出し、愛情深いがその日暮らし
の父親と2人で生活する少年チャーリーは、家計を助けるため厩舎で競争馬
リーン・オン・ピートの世話をする仕事をしていた。しかし、そんなある
日、父親が愛人の夫に殺されてしまう。さらに、試合に勝てなくなったピー
トの殺処分が決定したという知らせを受けたチャーリーは、ひとりピート
を連れ、唯一の親戚である叔母を探すため荒野へと一歩を踏み出す・・・

 

馬の名に何か意味があるのかと思ったが、よくわかりませんでした。

 

16歳のチャーリーはまだまだ子供といっていい。ランニングをしていて
偶然出会った厩舎のオーナーに小さい仕事をさせてもらううちに、馬に愛
情を持つようになる。このピートという馬とのいきさつがいいですね。
馬を連れての、叔母がいるらしいワイオミングへの逃避行は、無謀もいい
ところなんだけれど、ピートに語り掛け続けるこのシーン、シーンがとて
も印象深い。

 

それにしても、中に出てくる田舎競馬、距離がやたら短かかった。なんだ
かあの短い距離の競馬でずっと未勝利だったり、脚のケガのし方がひどか
ったりすると、さっさと売り飛ばされ、殺処分されるなんて、非情だなぁ。
それをせっかく逃れたのに、彼と馬の別れは思わぬ形で唐突にやってくる。
一瞬胸が詰まりました。

 

で、馬がいなくなったあとも、彼はいくつも寝泊まりするところを経て行
き、どこも自分の居場所にはなりそうもないと、みなろくでもない形で後
にすることになる。
ロードムーヴィの範疇なんですね。
暗い終わり方ではないものの、アメリカの負の部分に属する物語ではある
と思います。砂漠や荒野や乾いた町々が出てきて、なんというか、まとま
らない感じだったけれど、オジンになった目には、すべてがういういしか

った。

気に入りました。

A SPECIAL BLEND/The Singers Unlimited

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20200306(了)
スペシャル・ブレンド

    /ザ・シンガーズ・アンリミテッド

 1. BYE BYE BLUES (Hamm/Bennett/Lown/Gray) 4:10
 2. 'ROUND MIDNIGHT (B. Hanighen/C. Williams/T. Monk) 3:27
 3. CRY ME A RIVER (A. Hamilton) 3:59
 4. BORN TO BE BLUE (B. Wells/M. Torme) 3:39
 5. I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO (D. Cross/G. Cory) 4:27
 6. MOOD INDIGO (D. Ellington/Mills/Bigard) 4:27
 7. GOTCHA (G. Puerling) 4:19
 8. WHY DON'T YOU DO RIGHT (J. McCoy) 4:22
 9. WHEN I FALL IN LOVE (Young/Heyman) 4:37

  The Singers Unlimited(arr. Gene Puerling)
  Clare Fischer(arr.& cond.)

 CD (1993/3/25)/ジャズ・ヴォーカル/Ⓟ1976 MPS/ポリドール/邦盤/中古
 録音;1975年9月&10月、ハリウッド収録時間:37 分
 <★★★☆>

 

入手し漏らしていたアルバムの一つ。
LP収録の長さ(たった37分)の、今ならミニアルバムといってもいいよ
うな収録時間です。(ミニアルバムなんてまだあるのかな・・・)

ビッグバンドというほどの規模はないバンドをバックに、ぐっとジャズ
っぽく迫っている。
アカペラのときのくどいほどのアレンジはなく、ほとんどあっさりして
いる。
といっても、素敵なアレンジ、完璧無比なヴォーカル・アンサンブルに
特に変わったところアありません。
紅一点のボニー・ハーマンのヴォーカルが好調な感じ。
ブルースやポップスも混じるけれど、大半はジャズ系のスタンダードナ
ンバーのようです。

バンドのサウンドは、ブラスやホーンセクションはともかく、ベースは
エレキのよう。
ピアノはエレキになったりアコースティックになったり。
エレキの分新しいが、古びやすいサウンドでもあるという感じかな。
でも、ぶ厚くならない、まあまあオシャレなサウンドではあります。

アルバムの出来としては、これの3つあとの、ロジャー・ケラウェイの
クインテットをバックにしたジャズアルバムにはかなわない感じはする
が、水準は維持していると思います。

全部手に入れたいと思っていて、これで残りはあと3枚。何度も調べる
のですが、通販サイトに載ってこないのもあって、残念ながらいずれ
も手に入れるのは難しそうです。

ディスコグラフィー
In Tune (with Oscar Peterson)(1971年)
A Capella(1971年)
Christmas(1972年)
Four Of Us(1973年)
Invitation (with The Art Van Damme Quintet)(1973年)
Sentimental Journey (with The Robert Farnon Orchestra)(1974年)
A Capella II(1975年)
Feeling Free (with The Pat Williams Orchestra)(1975年)
A Special Blend(1976年)
Friends (with The Pat Williams Orchestra)(1977年)
Eventide (with The Robert Farnon Orchestra)(1977年)
Just In Time (with The Roger Kellaway Cello Quintet)(1977年)
The Singers Unlimited With Rob McConnell And The Boss Brass(1979年)
A Capella III(1980年)
Easy To Love(1981年)

 

 

(付録)

3/18(水)

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コロナの影響下、さまざまな活動が悲鳴を上げている。世界中がそうだ。
どこが悪いんだ、原因だ、などとバカげた擦り付け合いが始まっている。
加えて、群集心理のようなものがいかようにも流れさせられるのもよく
わかる気がしますが、やっぱり政治的な発言が特に気になる。
オリンピックもなんだか雲行きが怪しい。
で、今日目についたのは、オーケストラの記事。
メジャーオケでも大変なのに、地方のオケなんざ、ちょっと読みかけた
だけで、もうほとんどわかってしまう。
その貧乏さ加減は一応知っているので、、、今は、いつつぶれるのかな、
と心配で関係者は毎日気をもんでいるだろう。
ネット活用が少しは助けになるかも云々、なんて書いてあるが、そんな
方法論を試していない団体なんてあるもんですかね・・・今頃言ってい
るようじゃ話にならない。
もっとも、いい席に座る会員は年寄りが多いからねぇ、それもつらい。

ガラーンとした奈良公園

3/16(月)

ブランチのあいだ中、観るわけでもないのにテレビをつけています。
たいていはこの時間に新聞に目を通します。
が、今朝は新聞がお休みの月曜日。一週間以内の切り抜きなどを読
んでいましたら、国会中継参院予算委員会
経済への波及やさまざまな補助金など、俄然新型コロナ関係が多い

・・・

で、そうだったと、以下のことをアップしようと思っていたのを思

い出しました・・・

 

 

 3月13日、「奈良ブラ」。例年通り、夜は東大寺のお水取り。
二月堂での修二会。
でもね、なにが一番興味があったかというと、奈良の町や公園の
観光客の様子。
月並みですが、驚きました。特に昼間。
これまで見知っているつもりの、大体一割台ぐらいしかいない。
一割はオーバーかもしれない、、、二割かな。
ほんとうに、ガラーンとしていると言っていい。
いや、夜7時からの二月堂の「お松明」見物では、お客は五割ぐ
らいはいた感じだったんですけどね。
紅毛碧眼の国々よりは、韓国や中国や東南アジアの国々の観光客
がいなくなってみれば、日本人だって、ちったぁいるんだナ・・・
てなもんです。

昼間とろとろ歩いていて新しい見物は、聖武天皇陵や多聞城跡、
そして小高い丘陵地をならした広大な土地に建つ奈良少年鑑別所
この最後のがなかなかでした。
古くは奈良監獄。それが少年鑑別所になっていたんだけれど、最
近・・・ワタシは知らなかったのですが、星野リゾートが中心に
なって、ホテルその他の複合施設になることが決まったらしい。
(ネットに美しい写真が載っかっているでしょうが、ヘタクソな
 ガラケーの写真を載せましょう)
とにかく、古臭さはなく、その美しさただものでない、非常にカ
ッコよかった。言われなきゃ監獄だったなんて絶対わからない。
中の建物が品のいい大きなレンガ造りの建物で、これを囲んだ塀
までのいわば庭の部分がまた広い。塀もレンガ。正面入り口なん
ざ、ロマネスク様式云々と説明書きがあったが、なに、色でも替
えりゃあ、ディズニーなどのナントカパークの門みたい。こりゃ
あ特に女性が喜ぶ・・・

 

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   (中の建物が見事だったんだけれど、うまく写ってません)

 

お酒、効くようになりました。
弱くなったんですねぇ、当たり前だけど。

The Sisters Brothers

20200303(了)
映画『ゴールデン・リバー』

 ジャック・オーディアール監督//ジョン・C・ライリー/ホアキン・フェニッ
 クス/ジェイク・ギレンホール/リズ・アーメッド/・・・/ルトガー・ハウアー
 音楽;アレクサンドル・デスプラ
 2018年製作/120分/アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン合作
 原題:The Sisters Brothers
 <★★★☆>

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<映画.com解説から> ・・・ゴールドラッシュに沸く1851年、最強と呼ばれ
る殺し屋兄弟の兄イーライと弟チャーリーは、政府からの内密の依頼を受け
て、黄金を探す化学式を発見したという化学者を追うことになる。政府との
連絡係を務める男とともに化学者を追う兄弟だったが、ともに黄金に魅せら
れた男たちは、成り行きから手を組むことに。しかし、本来は組むはずのな
かった4人が行動をともにしたことから、それぞれの思惑が交錯し、疑惑や
友情などさまざまな感情が入り乱れていく。

 

シスターズというヘンテコな苗字の兄弟。
なんで殺し屋なんかやってるんだってことは、あとのほうにならないとわか
らないんだけれど、とにかく殺伐とした仕事なのに、兄弟の会話がいたって
まともで、鬱屈があってひどいぶつかり合いもするんだが、実は互いを思い
やっている。ここまで生き延びているのは、おそらく、ここまで喋り合って
いる ― 会話が成立している ― ことによると思わせる。

 

兄弟は、提督という雇い主の依頼に背く形で、「先行する夢想家」二人と行
動を共にすることで、まあ普通なら破滅に向かってまっしぐら、というとこ
ろなんだろうが、あまり殺伐としない、雰囲気が下がり切ってしまわないの
がけっこう変わっている。
実にあっさり殺すし、とどめなんかドライにやる。(そうそう、銃の音はア
メリカものと違っていました)
金についちゃあ錬金術まがいの対象であることとか、理想主義的な考え方が
出てくるとかも、やはりこの変わった雰囲気に寄与していた感じ。
最後は、この兄弟が、わけあって長い旅をしていたんだよという締め方にな
っている。ムシが良いものの、収まりもいい終わり方だと思いました。

 

出演作が目立つホアキン・フェニックスも素敵ですが、なんたって製作にも
加わったライリーさんが(ハチャメチャじゃないけれど)魅力的。
それから去年なくなったルトガー・ハウアーがセリフ一切なしの提督役。な
んと最後に出てきたと思ったら、死体。遺作だったりして・・・

 

さてこの変わった雰囲気の西部劇、音楽もしっかり貢献してまして、あとで
名を見てなるほどなぁ、でした。アレクサンドル・デスプラ。何でもやれち
ゃう、本当に器用な方。「ハリー・ポッター」までやっちゃってる。
ここではおよそ西部劇とは思えない奇妙に外したような音楽で、リズムもち
ゃんと刻むんだけれど、ギャングものぽくハードだったり、ジャズっぽかっ
たり、厚い弦でこってりさせてみたり、ツィンバロムを使ったり、、、でも
結局どこか仄暗さとヨーロッパ風味(もとはヨーロッパなんだからいいじゃ
ないか!とばかりに)がベースにあった気がするな。
賞を獲った「シェイプ・オブ・ウォーター」は、映画のせいか音楽はあまり
印象に残らなかったんですが、例えば、「アルゴ」とか「預言者」とかいっ
エスニック風味が利いたのが印象に強く残ってますね。(実際はそれらを
ちゃんと聴きなおしたわけではありませんが)

ツェムリンスキー;Sym.1&Sym.2

ツェムリンスキー さわやかな交響曲 二つ
20200224(了)
Alexander von Zemlinsky(1871-1942);

交響曲 第1番 ニ短調(1891-92)
  ①I Allegro ma non troppo           9:13
  ②II Allegro scherzando          6:03
  ③III Sehr innig und breit           9:10
  ④IV Moderato              7:35
交響曲 第2番 変ロ長調(1897)
  ⑤I Sostenuto - Allegro            12:07
  ⑥II Nicht zu schnell - Scherzando            9:47
  ⑦III Adagio                10:15
  ⑧IV Moderato               11:08

  ジェイムズ・コンロン指揮/ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
  録音:1996年1月,Studio Stolberger Straβe,Köln (Tot.75:36)
  CD/管弦楽曲/Ⓟ&ⓒ 1998 EMI/輸入/中古
  <★★★△>

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交響曲二つ、ともに19世紀末。
ということは、まだロマン派の続きのようなところがあるんだろうと思っ
て、のんびり聴き始めました。聴き始めまで、メシアンの3つのアルバム
を車中でとっかえひっかえ聴いていたので、余計にそう思えたかもしれま
せん、「ワー、クラシック!」

 

特に第1番はそうでしたね。
後期ロマン派、というよりはほとんどドイツロマン派そのもの。シューベ
ルト、メンデルスゾーンシューマンブラームスの音楽を集約したよう
な感じ。付け加えるなら、民族色込みでさわやかなドヴォルザークみたい
な味付け。はるか以前にすでにぶっ飛んでいたブルックナーに近いものも
も若干。ここではマーラーからはかなり遠いというか、違う世界という感
じ。ユダヤ系だからって、なにもみながマーラーみたいな音楽を作るとは
限らないのに、ついマーラーの音楽を嗅ぎつけたがってしまう。病的やね。
ええ加減な表現ですが、ワタシの感性なんてそんなものなのです。

 

ゆっくり堂々と始まる第2番も基本的には1番と同じように、ベースはド
イツロマン派。重々しくはないものの、今度はブルックナーは少し多く、
マーラーも少し、そして、ワーグナーぽいところ(ex.「ジークフリート
歌」)を聴きつけた気がしました。浅はかですね。
1番よりは違う世界に少しだけ踏み込んだというか、少し広がったという
か、そんな感じかな。形式感があって古典的。でもちょっと冗長。
そうそう、北欧の感じもあったんでした。


はじめて聴いたから、新鮮さはあったんですが、でもまあ、この2曲の交
響曲は、あんまりツェムリンスキーを感じるものじゃない気がします。と
いってはまずいか。まだ成熟期には達していないというべきですよね。 古
色がふんだんに聴けるばかりで、特色が乏しい。「さわやか系」ではあり
ます。極端な言い方をすれば、「習作」っぽい。始めに書いたように 「ワ
ー、クラシック!」。独特というなら、この一種の軽やかさや明るめの音
色でしょうか。
前回のツェムリンスキーは「交響的歌曲」や歌劇「カンダウレス王」でし
た。これらのすばらしい音楽にはもう少し時間が必要です。


あんた(の音楽鑑賞記)は「芯を食わない」という言い方を、ブログ上で
されたことがあります、7年とか8年とか随分前です。しつこく覚えている
ものですね。
そして、実際こんなのと似ているとか、あんなのからいただいたかもしれ
ないだとか、あまり褒められないような聴き方をいつもしてしまっている
・・・ 曲の選び方や解釈のしかたということになるのかな。ちょっと腹
が立ったのは確かだけれど、一面ではなるほどけっこう的を射ているかも
しれないとも思った。で、気持ち的にはチャラ、これでも根に持ってはい
ないつもりだったのです。

こんな鑑賞記を書いていて、なぜかこのことが突然思い浮かびました。

 

 

(以下は関係のない付録)
NHK-BSプレミアムで深夜(2/24、am2:00-)。
ベルナルト・ハイティンク/ウィーン・フィル//ザルツブルク音楽祭(8/末)
メインはブルックナー;Sym.7
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番(ピアノ;エマニュエル・アックス
M・ペライアの代役?)のあと。 テンポや表現など、目立つような設定は
なく、ただただ悠然と進める。このライブの直後かどうかはわからないが、
ハイティンクは引退したんだそうな。90歳。地味な巨匠として。
出てくるときも引っ込むときも、杖を突いてゆっくりゆっくり・・・
でも決して音楽がボケてない、思わせぶりでない、いい7番でした。
やはり引退演奏会のような感じ。客がなかなか去らなかった。もう引退発
表はなされていたんでしょうね。



映画『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』

ゾンビものにもいろんなヴァリエーションがなきゃね!
というか、あるもんやね・・・

20200225(了)
映画『ゾンビの中心で、愛をさけぶ』

  アントニオ・トゥーブレン監督・音楽//ゾーイ・タッパー/エド
  スペリーエス

       2018年製作/95分/デンマーク・スウェーデン合作/原題:Zoo/DVDレンタル
  <★★★△>

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(映画.com.解説から) 突如として訪れた世界の終わりによって愛を再
燃させていく倦怠期夫婦を描いた北欧発の異色のゾンビ映画。カレンと
ジョンの夫婦は倦怠期で、結婚生活は崩壊寸前に陥っていた。そんなあ
る日、人間がソンビ化する伝染病が蔓延し、街はゾンビだらけになって
しまう。カレンとジョンは感染を避けるためマンションの部屋に閉じこ
もり、救助を待つことに。しかし状況は悪化する一方で、ゾンビのみな
らず強盗や怪しい生存者たちが夫婦に襲いかかる。突如として訪れたサ
バイバル生活に刺激され、冷え切っていた2人の愛は再燃しはじめ・・・

 

見慣れているのは残酷この上ないものだけれど、ここでは「蔓延」とい
うような集団で目が白かったりよろけそうなゾンビがぞろぞろいる状態
はまったく見せない。状況説明だけで済ませている。でも十分わかる。

妊娠中に子どもを失ったことがきっかけとなって、夫婦の関係が怪しく
なってしまっているのもそう。あと一言で別れるという段階。
それがゾンビ化の蔓延のとんでもなく急な進捗で孤立。かろうじて首の
皮一枚でつながった夫婦だが、なんとか夫婦としてこの状況に対処し始
める。彼らは部屋からは少しは出るが、食料品を盗む(調達、確保する)
ために、住人のいなくなった部屋に入りに行くぐらい。
だいたい解説通りやね。
おしかける生存者との虚々実々や、強盗に対する対処は、なるほど!
です。
観ていて居心地悪いのは、覚醒剤が出て来すぎであることかなぁ。

 

言葉が英語なもんだから、観ている間中、一体どこ製なんだろうと時々
考えましたね。南半球かとも考えましたが、違った。
デンマークスウェーデンの合作ということだからか、脚本や監督のカ
ラーなのか、お国変わればアメリカ製(けっこういろいろ観ちゃってま
す)とこんなに違ってしまうものなのかと驚くほど。面白いシチュエイ
ション設定です。
そして、面白さは、コメディのおかしみに近いですかね。
ポスターはいいものの、この原題じゃあ「なんのこっちゃ?」。その点
邦題は他人のふんどしであっても利いていて、ゾンビに取り囲まれて取
り戻しかけた夫婦愛はどうなるんだ!てなもんで、これはうまいんじゃ
ないか。

 

音楽ですが、監督自身が脚本と共に音楽の担当になっている。出演こそ
していないものの、俳優さんでもあるんで、まるでイーストウッド・・・
電子音楽系の、地味に付けたものでした。通奏低音ふうだけれど、なか
なか立派なものだったようです。(音楽だけ聴いてみたい気もしますが、

サントラは出てないでしょうネ)

高峰秀子/旅日記 ヨーロッパ二人三脚

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20200228(了)
高峰秀子/旅日記 ヨーロッパ二人三脚

  解説;斎藤明美松山善三高峰秀子養女/作家)
  平成25年(2013)/新潮社/単行本/中古
       <★★★☆>

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まあ、一般人という扱いでいいのかなぁ、、、1958年、62年前のヨー
ロッパにいざなってもらいましょう、ワタシャ小学生か、円のレート
は1ドル360円。
いやいや、「わたしの渡世日記」のような傑作が書ける人が一般人な
わけない。よな?
もっともここじゃあ、面倒だったりややこしい漢字は平仮名や時には
カタカナで書いていたりするし、推敲なく、時には意味不明な単語や
文法的に変なところがあったりもする。
また、56年の時を経て本にするに当たっては、それこそノートの
まんま。(ノートの写真や中身のほんの一部が本の前後に紹介され
ているとおり)
34歳から35歳にかけての長い期間の旅ですねぇ。1958/8/24―1959/
3/28。そして、長い短いはあるけれど、毎日、実に真面目に記述して
いる。

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帯の二つ目の写真の最初に書いてある文章のもとはこんな感じ・・・

   松山ともしみじみ話したが、この何百人の中で一ばんビンボウなの
  はわたしたち夫婦だね、借金して、外国へ来てるとは誰も思わないね、
  と、タメ息をつき、二人で大声で笑った。
   私たちのとなりの席にはシェリー・ウィンタース、そしてイタリー
  のテーブルにソフィア・ローレンルネ・クレール等の顔もみえ、そ
  の他たくさん知った名前の人もいるらしいのだが、連日の疲れでボッ
  となった頭ではキョロキョロあたりを見まわす元気もない。音楽がサ
  ヨナラの主題歌を演奏し、こちらを見てニッコリしている。(略)盛
  大な花火をさいごに終わったのは朝の三時半。くたくたにつかれて部
  やへもどり明日の出発の支度をしたりしてベッドについたのは四時半
  だった。

なんてな具合。ヴェニスでの最高の時なのにグランプリを受けても熱狂は
なく、ほっとしたというだけ。(サヨナラというのは「無法松の一生」の
主題歌かなにからしい)
けっこう細かく食事やその店のことを書いている。それよりなにより高峰
の買い物癖が凄まじかった。
どこがビンボウだ!!! ハハ。

イタリアはローマから始まるも、映画祭の街ヴェニス中心。次は長くパリ
が中心。そこからドイツに行ったりする。ボンやケルン。
パリに戻ると、一人暮らしの藤田嗣治に会う。「レオナール・フジタ」は
なかなか羽振りがよさそうだった。外のトイレは有料で20フラン。よく
歩くが、とにかく食事の記述が多い。こんなのもちょろっと・・・
 
  どこへ行っても大使館なるもの同じ印象。ざあます夫人とどことなく
 冷めたき男性、立派な館邸、不味い食事。
  税金を払っているこっちの身にすると、あまりユカイではない。
  岸恵子さんが来る。彼女、やせて干物の如くだがけっこうけなげにや
 っているらしい。この月曜日日本へ三ケ月帰ると、嬉しそうだった。
 
若き岸恵子さんやね。ワタシはこの方のエッセイが気に入って何冊か読み、
娘に「ベラルーシの林檎」をプレゼントしたことがあります。
スペイン行き、根城はマドリッド梅原龍三郎なんてビッグネームも参加。
フラメンコはアラエッサッサの安来節みたい、、、に笑う。(ワタシ)
パリに戻り、またドイツへ・・・

ま、あとはさっといきましょう。
パリを根城にあちこちに出かけ、その後はローマを根城にあちこちでかけ、
ようやくマルセイユから帰路、クルーズ船に乗る。延々。地中海を東へ、
スエズを経て、アデンやムンバイで下船したりしながら・・・退屈を楽し
む長いクルージングの帰途。

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いわば単なるメモ帳。読まれることは(ほとんど)想定していないもの
といってもいいものなんで、「渡世日記」ではわからない素の「秀子」
がいました。
ワタシは、意外ですが、なんとなく映画を観ているような気になりまし
た。養女の斎藤明美さんがあとがきで同じようなことを書いていました。
これはたくさんのノートの一冊で、単純に夫婦の旅行のことを書き留め
ておいただけというもの。で、中には人に見られて恥ずかしい困るよう
なことは、他の50数冊の旅のノートともども、一切書いてない、それは
いかにも高峰らしい、と書いている。
そして始めの2週間を除けば、この自費での旅が高峰にとって最長で特
別な旅であったことも。
釣られて書きますと、女優業なるものに拘りのなかった彼女自身はこの
旅行記の中で、けっこうたくさんの映画を観てます。原語でね。だから
かもしれないが、たいてい「つまらん」と吐き捨てるように書いている
場合が多い。

 

(朝方眠る前に楽しい時間を幾度か過ごさせてもらいました。)